研究課題/領域番号 |
23780107
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
郷田 秀一郎 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00346587)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | タンパク質 / 生体分子 / 糖鎖 |
研究概要 |
本研究では病気の原因ともなる孔形成タンパク質の構造解明と孔形成機構の解明を目的としている。孔形成タンパク質とは黄色ブドウ球菌や海産無脊椎動物(ナマコやサンゴ)が生産するタンパク質で、赤血球や白血球の表面を認識・結合し、複数の分子がくっつく多量体化を経て膜に孔を形成する。孔の形成によって、赤血球や白血球の溶解が起こることから溶血性タンパク質とも呼ばれている。それらが単一の分子で存在している時の立体構造は幾例か報告されているが、多量体化状態での構造報告はほとんどない。研究代表者は試料にナマコ由来溶血性レクチンCEL-III,黄色ブドウ球菌由来ロイコシジン、サンゴ由来CEL-III相同タンパク質を用いて実験を行った。単一に精製することに成功しているCEL-IIIを用いて時分割X線小角散乱測定を行った。その結果、CEL-IIIは界面活性剤存在下でも解離しない最小単位の多量体構造の形成を経て、さらに大きな多量体を形成していることが明らかとなった。黄色ブドウ球菌由来ロイコシジンは遺伝子組換えタンパク質として大腸菌を宿主に用いて生産し、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で単一のバンドを示すまでに精製することに成功し、in vitroでの多量体化条件として、有機溶媒3-メチル-1,5-ペンタンジオール(MPD)存在下での多量体形成をX線小角散乱測定及び動的光散乱測定によって見出した。CEL-IIIにアミノ酸配列相同性を示すタンパク質としてサンゴ由来レクチン(AML)を見出し、遺伝子組換えタンパク質として生産することに成功し、その糖特異性を明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ストップドフローX線小角散乱測定を行い、多量体化における分子量及びギニエ半径(Rg)を求めることに成功し、また中間体の存在を明らかとしている。しかしながら現在までにモデル構造の構築には至っていないがおおむね順調に進んでいる。X線結晶構造解析を目指した多量体の結晶化はいくつかの結晶を得ることに成功しており、初期の回折測定データが得られている。今後、分解能の向上のために、さらなる結晶化条件の検討を行う。黄色ブドウ球菌由来ロイコシジンのin vitroでの多量多化条件の探索に成功しており、順調に進展している。サンゴ由来レクチンの生産にも成功しており、糖特異性を明らかとしている。以上のことから、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
CEL-IIIに関しては引き続きモデル構造の構築を行う。ロイコシジンは多量体化条件が明らかとなっていることから放射光施設(SPring-8)でのX線小角散乱測定を行う。より生体と近い条件での多量体試料を得るために、赤血球を溶血し、その赤血球膜からロイコシジン多量体を回収して、構造解析を行う。サンゴ由来レクチンは凝集体の形成が顕著で多量体化の測定が困難であると考えられている。そこで、多量体化に関与する部分のアミノ酸を削除した変異体を作成し、X線結晶構造解析により糖結合ドメインの構造を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
試料を調製するための培養試薬・精製用試薬・カラム等の消耗品を購入する。研究成果の発表のために外国旅費・国内旅費を申請する。放射光施設を利用して測定するため、その使用料にあてる。
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