研究課題/領域番号 |
23780111
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研究機関 | (財)岩手生物工学研究センター |
研究代表者 |
中島 将博 (財)岩手生物工学研究センター, 生物資源研究部, 研究員 (60580727)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | マコモ / 黒穂病菌 / 肥大成長 / 細胞壁分解酵素 / SuperSAGE |
研究概要 |
マコモ、黒穂病菌のゲノムのドラフト配列はde novoアセンブリにより得た。マコモのゲノムサイズは520 Mbp、N50は32 kbp、黒穂病菌ではそれぞれ24Mbp、2.8 kbpであり、発現プロファイル作成に十分な質であった。マコモ遺伝子41243個中357個が糖加水分解酵素遺伝子であり、そのうち分泌型(細胞壁分解酵素遺伝子)は124個であった。一方、黒穂病菌では全遺伝子7434個中、84個が糖加水分解酵素であり、そのうち50個が分泌型であった。 肥大成長前、初期、中期、後期のマコモ花茎、未感染マコモ花茎を用い、SuperSAGE法による遺伝子発現解析を行った。この方法では遺伝子同定可能な短いmRNA配列(タグ)のリード数を発現量とするが、各サンプルで総タグ数500万以上の大量のデータを得た。 マコモでは細胞壁分解酵素遺伝子124個中45個で発現がみられ、ペクチン分解酵素であるGlycoside hydrolase family (GH) 28遺伝子が非常に高い発現量を示した。また、一部のGH28では感染マコモの肥大前のサンプルで非常に高い発現量を示した。セロビオヒドロラーゼホモログであるGH9酵素遺伝子の一つは非常に高い発現量であり、多数のβ-1,3-グルカナーゼ遺伝子の発現がみられた。また、興味深いことに、タンパク質をコードする遺伝子由来のタグ配列は全体の半分のみであった。 黒穂病菌では、肥大成長前から後期にわたり多種の細胞壁分解酵素遺伝子が高い発現量を示した。特に、セルラーゼ系酵素とされていないGH51やGH30酵素遺伝子の発現量が高く、黒穂病菌のユニークな細胞壁分解の仕組みを示唆している。また、肥大成長部位で発現量の高い遺伝子のうちGH3 β-グルコシダーゼの機能解析を行い、β-1,3-グルカンに高い活性を示すことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は黒穂病菌、マコモのゲノム解読の完了、マコモ肥大成長部位の遺伝子発現解析の完了、そして高発現遺伝子産物の機能解析の開始を予定していた。解読した黒穂病菌、マコモゲノムは遺伝子発現解析に十分の質であった。マコモ肥大成長部位のサンプリングは問題なく行うことができ、それを用いた遺伝子発現解析では大量のデータを得ることができ、発現量の比較が十分に行える遺伝子発現プロファイルを作成できた。また、高発現細胞壁分解酵素遺伝子の中からGH3 β-グルコシダーゼの詳細な機能解析を行い、この結果は学術論文に掲載された。以上から、申請書の計画通りに研究が進展していると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、高発現細胞壁分解酵素遺伝子産物の機能解析を行う。黒穂病菌では特徴的な細胞壁分解酵素遺伝子の発現パターンが見られたため、特に発現量の高いものを中心に詳細な酵素機能解析を行い、黒穂病菌のターゲットとする細胞壁糖鎖を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画通り本年度は酵素機能解析が中心であり、酵素の大量生産系の構築、酵素精製、活性測定に必要な試薬、基質、器具類の購入を予定している。また、研究成果発表のための旅費、投稿費用などに使用する。
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