研究概要 |
感染部位で発現の見られる分泌型細胞壁分解酵素のうち、GH3 β-グルコシダーゼ(Bgl3A)とGH16 β-グルカナーゼ(Lam16A)の麹菌による異種発現系の構築に成功した。これを用いて生産した組換え酵素を精製し機能解析を行った。 Bgl3Aは可溶性のグルコシドに対し広い基質特異性を示したが、β-1,3-グルカン、グルコオリゴ糖に対して比較的高い活性を示した。そこでβ-1,3-グルコオリゴ糖に対するカイネティックパラメーターを調べたところ2糖から4糖に対して高い活性を示した。一方、Lam16Aはβ-1,3-グルカンに対して高い特異性を示した。β-1,3-グルコオリゴ糖に対しては5糖以上の基質に対して高い活性を示した。この結果は、Bgl3AとLam16Aが協同的にβ-1,3-グルカンの分解を行う可能性を示唆している。また、Lam16AはC末にGPIアンカーシグナル配列(GPI-AS)を持つ。GPI-ASの有無による組換えLam16Aの麹菌における局在を調べた結果、GPI-ASの有無に関わらずLam16Aは培養上清に分泌されていたが、GPI-ASを持つLam16Aのみ膜への局在が確認された。この結果から、Lam16Aがまず黒穂病菌細胞膜に局在して自身の細胞壁の再構築に関わるが、その後培養上清に遊離し、Bgl3Aとともに外来性のβ-1,3-グルカンの分解に関与することが推測された。
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