最終年度においては、昨年度調製を行った痙攣作用インドールジテルペンpaspalinineの左右部分構造、及び昆虫成長阻害物質thiersinineの右側構造について活性試験を実施した。現在、共同研究者のもとで構造活性相関研究が進行中である。また、クラスター効果による活性の増強を期待してpaspalinine右側部分構造の金ナノ粒子への担持にも取り組み、クラスター化化合物調製のための予備的な知見を得た。さらにpaspalinineの合成研究で確立した手法に基づいて、プロゲステロンレセプターのアンタゴニスト活性を有するインドールジテルペンlecanindole Dの合成研究に取り組み、初の全合成を達成したのでTetrahedron Lett.誌にて発表した。 期間全体の研究成果としては、paspalinineの新規短段階合成を達成し、これまでの唯一の合成報告と比較して6工程短縮し収率も向上させることに成功した。本成果は化学系のトップジャーナルであるAngew. Chem. Int. Ed.誌に掲載されただけでなく、有機化学分野の注目トピックを紹介するインターネットサイトOrganic Chemistry Highlightsにも紹介されるなど高い評価を受けた。本合成戦略により上述の様にlecaninndole Dの全合成やthiersinineの部分合成にも成功した。インドールジテルペン類は抗MRSA活性や細胞分裂阻害活性など広範な活性を有する化合物群であることから、本研究により部分構造も含めた標品の供給が容易になり、その作用機構解明が進むものと期待している。
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