研究課題/領域番号 |
23780113
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
金 承鶴 東京農工大学, 農学研究院, 准教授 (90537127)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 核酸合成 |
研究概要 |
核酸オリゴマーは広範な研究領域で重要な役割を果たしている一方で、現在、合成することが困難な配列が顕著に増加している。これは、反応性の低い固相支持基盤を用い、核酸モノマーを順次伸長していくことが要因であり、新たな現象の解明や機能探索において大きなボトルネックになっている。本研究は、「疎水性ナノ反応場」の原理に基づいたフラグメント合成システムを構築することによって、従来困難であった核酸オリゴマーを実践的かつ効率的に合成し、広範な学術領域の発展に広く貢献するものである。本システムを確立するためには、新規リンカー分子を設計し、液相支持体に導入する必要がある。ホスホロアミダイト試薬由来のフラグメント鎖は、酸や熱、塩基、還元に対して不安定な保護基を有する上に、伸長過程に亜リン酸エステルをリン酸エステルに変換する酸化反応が含まれるため、これらの条件を切断反応に適用することは現実的に回避されるべきである。このことを踏まえ液相支持体分子を新たに合成し、ターゲット難シークエンスに必要な合成用核酸フラグメント鎖について、その合成ルートを確立し、新規リンカー分子の最適切断条件を探索することを計画した。本年度は新たに疎水性液相担体を8種類合成した。いずれの化合物についても、簡便かつ低コスト、さらには100グラム以上のスケールを持って合成することが可能になった。さらにこれらの担体は、リンカー分子の構造によって溶解度が著しく変化することが明らかとなった。このことは有機溶媒中においても液相担体が疎水総合作用や水素結合によって非常に弱い会合状態を形成していることを意味している。同時に、平均粒径が30nmと高い均一性を持って分散していることから、核酸伸長反応において高い等価性と反応性を有する合成システムになることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
液相合成反応における可溶性担体の分散状態は、適用する反応を確実に再現するうえで極めて重要な役割を果たしている。つまり、可溶性担体を用いた液相合成は、均一に担体が分散している状態においても、反応の不均一性を発現することが従来の問題点であり、欠損配列の生成等、純度の低下につながっていた。当該年度の研究においては、これら液相反応に関わる課題を克服する重要な知見が得られたと同時に、液相反応に期待される反応性を最大限引き出すことが可能であることから、当初の計画通り進捗していると考えている。また、反応に用いられる疎水性液相担体を100グラム以上のスケールで容易に合成可能なルートが確立できたことから、今後の研究を大きく推進することが期待されるため。
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今後の研究の推進方策 |
当該研究で合成した液相担体を用いて、Gカルッテット領域を含む、G,C含量の高いRNA鎖を順次ブロック伸長を実施していく。最終的に以下に示す反応実績の実現を目指す。・10, 15, 20merと各伸長反応に最適の粒子径を測定し、反応率平均98%以上とする。・フラグメント鎖の当量数を1.5当量以下、反応時間は10分以内(mgスケール)とする。特にブロック伸長法の鍵となるHNRによる反応促進効果について、フラグメント鎖の構造特性と液相支持体が形成するナノ領域の反応場(粒径分布)との相関関係を明らかにし、カップリング反応の適用範囲と最適条件を明らかにしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
「疎水性ナノ反応場」の原理に基づいた核酸オリゴマーのフラグメント合成法を確立するためには、液相支持体を合成し、各種反応条件を検討し、合成された生成物の構造を解析する必要がある。本計画に必要な各種分析機器は、本学及び連携研究員の所属している企業に整備されているために新たに購入する必要がなく、各々企業のコアコンピタンスの強化に繋がるなどメリットも多く、事前に協力体制が整備されているために、経費を抑えた形で研究を実施する。このため、合成実験の反応、分離、精製、分析等に必要な最低限必要なの試薬やガラス器具類の消耗品を申請することした。詳細としては、既に市販されいる、ジクロロメタンやクロロホルム、アセトニトリルなどの各種有機溶媒類、核酸合成のためのホスホロアミダイト試薬やテトラゾール類等をmgーgスケールの核酸合成に対応する形でで購入し、研究を実施する。また、本研究成果について、広範な学術分野に貢献できるため、国内外の学会発表、論文を投稿し、広く普及させることを目指す。
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