研究課題/領域番号 |
23780115
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中崎 敦夫 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (00366428)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 軸不斉 / インドール / 多環式含窒素天然物 / 不斉合成 / 生理活性物質 |
研究概要 |
インドールやその酸化体であるオキシインドール等の骨格は、重要な生理活性を有する天然有機化合物や医薬品などにしばしば見受けられ、種々の置換様式を伴って多環式骨格の中に組み込まれている。その多くは環内や環の周辺に不斉炭素原子を有しており、それらの立体化学は生理活性にも直接関連があることから、化学合成を行う際には、いかして立体制御を行うかが重要となる。本研究課題では、インドール及びその誘導体を骨格として有する多環式含窒素天然物の合成を指向して、(1)軸不斉インドール類を基盤とする多様なインドール骨格の不斉合成、(2)強力な生理活性をもつ多環式含窒素天然物の合成、という2点について系統的に研究することを目的としている。 本年度は、軸不斉を有するインドール類を利用した多様な骨格合成を達成するために、「全ての原料となる光学活性なN-アリールインドール類の大量合成法の確立」及び、「軸不斉N-アリールインドール類を用いる多様な骨格変換の検討」という2つについてそれらの一部を検討した。前者では、原料となるN-アリールインドールの合成について、当初、酵素やキラルなアシル化触媒を利用した不斉非対称化や光学分割によって合成を行う予定であったが困難であることがわかった。一方、より挑戦的な試みである軸不斉を有するN-アリールインドール類の触媒的不斉合成は現在検討中である。後者では、基質となるN-アリールオキシインドール類が持つ不斉場を利用した各種骨格変換を検討した。その結果、オキシインドールに対する求核付加反応や求電子置換反応が高い立体選択性で進行することを見出した。これによって天然有機化合物の基本骨格として広く見受けられるオキシインドール骨格を高ジアステレオ選択的に構築できる可能性を見出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究内容である「軸不斉N-アリールインドール類を用いる多様な骨格変換の検討」については、種々の反応が進行することを明らかにしつつある。「光学活性なN-アリールインドール類の大量合成法の確立」については、酵素などを利用した不斉非対称化や光学分割によって合成を行う予定であったが困難であったことをうけて、キラルな遷移金属触媒を利用した触媒的不斉合成を検討中である。この反応に用いる基質の合成は可能であることがわかり、また立体的影響の大きな化合物を反応基質に設定していることから、目的の光学活性なN-アリールインドール類が合成可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の検討課題であった「軸不斉N-アリールインドール類を用いる多様な骨格変換の検討」については、前述の反応以外に付加環化反応やシグマトロピー転位を検討し、その骨格の多様性の拡張を目指す。また反応後に不要となる下部芳香環の酸化的除去の最適化を検討し、導入されている官能基を損なわないような温和な条件での脱アリール化を目指す。 一方、N-アリールインドール類の不斉合成を達成するため、基質の安定的な供給ルートの確立とその物性の確認、および不斉触媒化の可能性を明らかにする。上述のことが確認され次第、これまで不斉合成が困難であったテレオシジン類などの多環式含窒素天然物の合成を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
N-アリールインドール類の不斉合成に利用する不斉配位剤や遷移金属触媒は高価であることから、それらの購入が消耗品費の大部分を占める予定である。また不斉触媒反応に展開した暁には、スケールアップしたN-アリールインドール類の合成に展開することから、それら原料の大量購入も予定している。
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