研究課題/領域番号 |
23780117
|
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
柳田 亮 香川大学, 農学部, 助教 (10598121)
|
キーワード | 希少糖 / allose / がん |
研究概要 |
天然に稀にしか存在しない希少糖の一種であるD-alloseは、正常細胞に対して毒性を示さない一方で、がん細胞増殖抑制作用を示すことから副作用の少ない抗がん剤シード化合物として注目されている。しかしながら、D-alloseが抗増殖活性を示す濃度はミリモーラー以上と比較的高く、活性を高めた誘導体の開発が求められている。 前年度の結果からD-alloseの6位水酸基を中鎖脂肪酸エステル化することで白血病細胞株MOLT-4Fに対する抗増殖活性が約60倍向上することが明らかにされている。本年度は、D-allose中鎖脂肪酸エステル誘導体のpyranose型、furanose型異性体のうちどの異性体構造が活性に寄与しているかを明らかにするため、環およびα/β構造を固定した誘導体の合成を行った。当初は計画通り、糖の環内の酸素原子を炭素原子で置換した誘導体の合成を試みたものの、計画した中間体を合成することができなかったため、1位をメチルアセタール化による環構造の固定を試み、環構造が5員環で固定されたfuranoside型D-allose誘導体を合成した。この誘導体のがん細胞増殖抑制活性はD-allose中鎖脂肪酸エステルから若干低下していたものの、controlとして用いたD-glucose中鎖脂肪酸エステルよりも有意に高い活性を示すことが明らかとなった。この結果は、溶液中では存在比率の小さいD-alloseのfuranose型が活性に寄与している可能性を示唆している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、D-alloseエステル誘導体のfuranose型が、がん細胞増殖抑制活性に寄与している可能性を環構造固定誘導体の活性評価によって示した。しかしながら、大幅な活性上昇は見られなかったため、計画通りに39種類のがん細胞パネルに対する活性評価を行うには至らなかった。活性が向上しなかった理由については、1位のアセタール化による影響と考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、D-alloseのfuranose型が活性に寄与していることが明らかになったのを受け、D-alloseと同様の水酸基の立体配置を持つfuranose型を取ると考えられるD-ribose,D-homoribose,5-O-methyl-D-alloseの中鎖脂肪酸エステル誘導体を合成し活性を評価する。また、最近、D-alloseのがん細胞増殖抑制活性には6位水酸基のリン酸化、がん抑制遺伝子TXNIPの発現上昇が重要であることが明らかにされた。そこで、D-alloseの6位リン酸化誘導体を細胞膜を透過可能なようにプロドラッグ化した誘導体を数種合成し、がん細胞増殖抑制活性ならびにTXNIP発現誘導活性を評価する。活性が認められたプロドラッグについては、糖部分に関して得られた構造活性相関に関する知見に基づいて、構造の最適化を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
消耗品の主なものは有機合成用試薬、有機溶媒、生物活性試験用試薬、生化学用試薬である。その他、研究成果を発表するための旅費として使用する。なお、設備備品の購入予定はない。
|