研究課題/領域番号 |
23780118
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
西脇 寿 愛媛大学, 農学部, 助教 (30508784)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 昆虫制御物質 / クサカゲロウ |
研究概要 |
本研究は,吸汁性肉食昆虫であるニッポンクサカゲロウ由来の麻痺活性物質の活性発現に必須な構造要因ならびに昆虫体内での生成機構を解明するとともに,殺虫スペクトルを明らかにすることを目的としている.そして,作用機構に関して知見を得ることを試み,新規害虫制御剤の開発に役立てることも目指している.はじめに,ニッポンクサカゲロウ幼虫の大あごから吐き戻し液を採取し,そこに含まれている麻痺活性成分をイオン交換カラム,疎水性カラム,ゲル濾過カラムならびにハイドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーなどを用いて精製することを試みた.その結果,活性成分をSDS-PAGE上で100 kDa以上の分子量を有する2成分にまで絞り込むことができた.次に,これらのバンドを切り出した後,バンドに含まれているタンパク質をトリプシンならびにエンドペプチダーゼAspNなどの消化酵素を用いてゲル内消化し,得られたペプチドをLC-MSにより分析することで内部アミノ酸配列を解析した.その結果,それぞれのタンパク質由来のペプチドを数種得ることができた.得られた推定ペプチド配列が既知タンパク質のものであるのか調べるためにBLASTで検索したところ,ヒットする配列はなく,新規タンパク質である可能性が示唆された.さらに,これらのアミノ酸配列をもとにプライマーを設計するとともに,PCRの鋳型としてクサカゲロウ幼虫からtotal RNAを調製した.現在活性成分の全アミノ酸配列の解明を目指してさらに研究をすすめている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請時の計画では,前年度終了までに活性タンパク質の全一次構造を明らかにすることを目指した.しかし,実際は活性タンパク質の絞り込みに予想以上に時間がかかってしまい,予定していた実験にまでこぎつけることができなかった.研究計画と比較した際の達成度としては,客観的に見て物足りない感は否めない.しかし,アミノ酸配列のBLAST検索の結果から,本研究の対象麻痺成分が新規タンパク質である可能性を示した成果は今後につながる重要な知見と考える.さらに,現在着実に研究成果が出始めており,今後は研究成果をインパクトの高い研究として確実に公表できるように努めていく.
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今後の研究の推進方策 |
前年度明らかにすることができた内部アミノ酸配列を足掛かりとして作成した宿重プライマーを用いて,タンパク質をコードする遺伝子の塩基配列を解明することで,全一次構造の解明を目指す。同時に,麻痺活性物質遺伝子の塩基配列の中から毒素特異的な領域を探索し,その部位でプライマーを作成してreal time PCRで解析することにより,このタンパク質がクサカゲロウ体内のどの部位で,どの時期に特異的に発現しているのか特定する.以上の研究を確実に遂行した後,麻痺活性物質の組換体タンパク質作成や活性物質をコードする遺伝子を他の近縁種の昆虫が有するのかどうか確認する研究へと繋げていく.
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次年度の研究費の使用計画 |
麻痺活性物質遺伝子の全塩基配列を解析するためのクローニングやシークエンシング,さらに,前年度に外部依頼する予定であったN末端アミノ酸配列解析の依頼などのタンパク質の一次構造を解明する研究に費用をあてる.そして,その成分が本当に生理活性物質であるのか確証を得るために,その組換体タンパク質を作成する費用として研究費を用いる.
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