脈翅目に属するニッポンクサカゲロウがえさ昆虫を捕食する際に利用している麻痺活性物質を単離精製し,その構造を解明することを第一の目的とした.また,活性発現に必要な最小構造を明らかにするとともに,その活性物質がクサカゲロウ体内で生産される部位や時期に関して知見を得ることを第二の目的として,得られた研究成果を新規害虫制御剤の開発に役立てることを目指した. 前年度ニッポンクサカゲロウ幼虫より採取した吐き戻し液からイオン交換カラムなどの各種カラムクロマトグラフィーを用いて麻痺活性成分を精製し,活性成分をSDS-PAGE上で2成分にまで絞り込んだが,最終年度さらに精製を試みることにより主要な1成分にまで絞り込んだ.この精製過程において,麻痺活性タンパク質がかなり不安定であることが判明した.そして,バンドに含まれているタンパク質に関して,N末端アミノ酸配列をエドマン分解で,内部アミノ酸配列をLC-MSにより分析することにより解析した.得られたN末端と5カ所の内部アミノ酸配列をもとにして縮重プライマーを作成し,クサカゲロウ幼虫から調製したcDNAを鋳型としてPCRにより増幅を試みた.その結果,いくつかのプライマーの組み合わせにより増幅するバンドが確認され,それらの塩基配列を決定することができた.今後これらの部位でプライマーを作成し,5'-および3'-RACEにより全塩基配列を解析し,麻痺成分のアミノ酸一次構造を決定することを目指すとともに,Realtime-PCRを用いて,活性成分がどの時期および部位で特異的に発現するのか解析する.
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