研究概要 |
昨年度は胆汁酸受容体TGR5を活性化する食品成分ノミリンを同定し、抗肥満・抗糖尿病効果を有することを報告した(Ono et al., BBRC 2011. 410. 677-681)。平成24年度は、ノミリン以外のTGR5活性化成分に関する検討を行った。スクリーニングより同定した食品成分の中で、TGR5を特に強く活性化した食品成分(成分A;投稿論文準備中)に注目した。ルシフェラーゼアッセイを用いた実験結果より、成分Aは強力な活性化剤である胆汁酸やノミリンと同程度にTGR5を活性化した。また、成分Aは胆汁酸をリガンドとする核内受容体FXRには作用せず、TGR5選択的な活性化剤であることが示された。TGR5は褐色脂肪組織で熱産生や脂肪分解を活性化することから、マウス初代褐色脂肪細胞を用いた実験を行った。リアルタイムPCRを用いた遺伝子発現解析の結果、成分Aの添加によりTGR5の標的遺伝子であるDio-2(deiodinase-2)の発現増加が認められた。さらに高脂肪食付加マウスを用いた実験から、成分Aは高脂肪食による体重増加量を抑制することが示された。様々な代謝パラメーターを解析した結果、成分Aの投与により内臓脂肪量が低下することが示された。一方、血糖値の変動は認められなかった。このことから、この成分Aは抗肥満効果を持つことが示された。以上の実験結果から、成分AはTGR5を活性化する新たな食品成分であり、抗肥満効果を有することが示された。今後、各組織における遺伝子発現解析などを行うことで、成分Aの作用機序を明らかにする予定である。
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