研究課題/領域番号 |
23780129
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
片山 茂 信州大学, 農学部, 助教 (30443922)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | アレルギー |
研究概要 |
本研究では,アレルギー疾患の根治的治療につながる免疫寛容誘導剤の開発を目的として,Treg分化誘導能を有するポリフェノール配糖体の創製を試みた。得られた成果は次の通りである:1.酵素合成法により新規ポリフェノール配糖体を合成し,HPLCにより分離精製した。加水分解反応の逆反応を利用して,フェノール性化合物に糖鎖を付加させた。その結果,シナピン酸,カフェ酸,バニリン酸,フェルラ酸,カテキンを骨格とした新規配糖体を得ることができた。これらの構造はNMRおよび質量分析により確認した。これらの配糖体については,脾臓細胞のインターフェロンγ産生能が糖鎖導入により上昇することが示された。2.樹状細胞様THP-1を用いたin vitroアッセイ系を用いて,免疫寛容誘導能を有する免疫制御因子のスクリーニングをおこなった。樹状細胞様THP-1上のHLA-DR(MHCクラスII抗原)の発現量はOVA刺激により著しく上昇した。このときの抗原提示能を指標として,抗原提示抑制作用を有する免疫制御因子のスクリーニングを行なった。その結果,カテキン,カテキン重合体(プロシアニジン),さらにはグルコマンナンやカラギーナンなど数種の糖類において,OVAに対して顕著な抗原提示抑制作用が示された。現在,Treg分化誘導に及ぼす影響を明らかにするため,IL-10産生能とレチノイン酸合成酵素RALDH2の発現レベルについて検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
樹状細胞様THP-1を用いたin vitroアッセイ系によるスクリーニングは,順調に進行している。また,酵素反応の逆反応を利用したポリフェノール配糖体についても,すでに5種類の合成を終えている。今後は,同スクリーニングにより効果の高いものを選出し,アレルギーモデルマウスによる動物実験を実施することで,その効果を実証していく。以上の進捗状況から,本研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
樹状細胞様THP-1を用いたin vitroアッセイ系により,様々な抗原による抗原結合型ポリフェノール配糖体の免疫寛容誘導能を評価する。効果が高かったものについては,卵白OVAを経口摂取することによって食品アレルギー様の免疫応答を誘発するモデルマウスを用いて,経口摂取への影響を検討する。血清中のIgE量,ヒスタミン量をELISA法で測定し評価するとともに,CD4+Foxp3+細胞(=Treg)分化誘導作用を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画は以下の通りである。1.マウスを用いた動物実験を実施するため,実験動物とその飼育に必要な消耗品を購入する。2.細胞実験を実施するため,細胞培養に必要な消耗品を購入する。3.遺伝子発現の定量解析のため,分子生物学試薬や消耗品を購入する。4.サイトカイン,抗体,およびヒスタミンなどをELISA法で定量するため,各種抗体や試薬類を購入する。5.抗原結合型ポリフェノール配糖体の作製および分離精製に必要な試薬類を購入する。
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