本研究では,抗原特異的に免疫寛容を誘導する新規免疫調節剤の開発を目的として,酵素合成法によるTreg分化誘導能を有するポリフェノール配糖体の合成を試みた。得られた成果は以下のとおりである:1.酵素合成法により5種類のポリフェノール配糖体(カテキン,バニリン酸,シナピン酸,フェルラ酸,カフェ酸)を合成した。上記ポリフェノール配糖体の分子量はFAB-MSにより決定し,さらにNMR分析により構造解析(糖の結合位置を含む)を行った。なお,ポリフェノール配糖体合成における糖転移反応の至適条件は,50℃,pH 5.0,250ukatであり,加水分解反応の至適条件とは異なることが明らかになった。2.樹状細胞様THP-1を用いたin vitroアッセイ系により,上記ポリフェノール配糖体の免疫寛容誘導作用および免疫調節機能について検討した。Treg分化誘導に関するIL-10産生量とレチノイン酸合成酵素RALDH2のmRNAレベルを測定したが,顕著な変化は認められなかった。一方,卵白主要アレルゲンOVA刺激下において,樹状細胞様THP-1のMHCクラスII分子のHLA-DRと補助刺激分子CD86の発現量は,ポリフェノール配糖体の添加により有意に低下した。以上の結果は,酵素合成法により合成したポリフェノール配糖体が樹状細胞における免疫調節機能を有し,アレルギー疾患予防への利用が期待できる新たな化合物であることを示唆するものである。
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