研究課題
本研究は、体内へ吸収されたβ-グルカンの代謝への活性酸素の関与とその分解物の生物活性について明らかにすることを目的としてる。マウス腹腔マクロファージ、マクロファージ細胞株(RAW264.7)およびヒトマクロファージ細胞株(THP-1)を活性酸素産生に関わるNADPHオキシダーゼやミエロペルオキシダーゼといった酵素阻害剤存在下またはラジカルスカベンジャー存在下でβ-グルカンを添加し、可溶化され再放出されたβ-グルカンを定量すした。これらの実験の結果からマクロファージによるβ-グルカンの可溶化に対し、NADPHオキシダーゼの関与する活性酸素によりマクロファージ内で非酵素的にβ-グルカンが分解されること、また、再放出されたβ-グルカンがマクロファージ活性化能を持つことを明らかにした(BBRC vol. 412, pp 329-334)。加えて、無細胞系での鉄-アスコルビン酸、銅-アスコルビン酸、または、鉄-過酸化水素を用いた活性酸素処理によるβ-グルカンの分解能についても受容体結合能を指標として評価し、in vitroにおいてもβ-グルカンの分解が活性酸素により起こることを示した(Hind gut club japan 2011)。 低分子β-グルカンのマクロファージ活性化能を解析するために用いるβ-グルカン酸加水分解物の調製を行った。また、高分子のβ-グルカンは不溶性という性質を持つため、段階的に遠心分離を行うことで粒子分布の異なるβ-グルカン溶液を調製した。これらのサンプルについては次年度以降に解析予定である。
2: おおむね順調に進展している
初年度に計画していた阻害剤を用いた実験においてマクロファージによるβ-グルカンの代謝へ活性酸素が関与するという仮説を支持する結果が得られており、また、この現象は種や細胞株に特有の現象ではなく、マクロファージ全般に見られる一般的な現象であることを示すことができた。また、次年度に向けてのサンプルの調製も順調に進んだことから、研究全体としておおむね順調に展開しているといえる。
初年度においてマクロファージによるβ-グルカンの代謝へ活性酸素が関与するという仮説を支持する結果が得られている。この結果をさらに確実にし、詳細を明らかにするためにsiRNAを用いたNADPHオキシダーゼ、ミエロペルオキシダーゼの遺伝子ノックダウン実験を行う。また、これまでにβ-グルカンは活性酸素によって分解された後に低分子化β-グルカンを細胞外に放出することを見出しているため、低分子化β-グルカンの免疫刺激活性および受容体結合能についても検討を行う。
主として、遺伝子ノックダウン実験に使用する試薬、細胞培養関連試薬および低分子化β-グルカンの免疫刺激活性を解析するためのPCR試薬およびELISA用試薬に使用する。また、腹腔マクロファージおよび腸管マクロファージを調製するため、実験動物の購入および飼育に使用する。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (15件)
Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 421 ページ: 329-334
10.1016/j.bbrc.2012.04.009
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 75(11) ページ: 2169-2174.
10.1271/bbb.110460