研究課題
本研究では、静菌性乳化剤の乳化破壊現象に対して、基礎研究と応用研究の両側面からアプローチを行った。基礎研究では、乳化破壊現象を系統的に解析することで、油脂と乳化剤の構造の類似性とエマルションの不安定化の関連性を明らかにすることを目的とした。応用研究では、乳化破壊現象を利用して、油滴の合一が香気成分の放散に与える効果について検討を行うとともに、有機溶媒を使用しない油脂の新規抽出法を開発することを目的とした。平成24年度は、平成23年度に得られた成果をもとにして、引き続き研究を行った。その結果、構造の類似性と乳化物の不安定化の関連性については、構造の類似性は必ずしも不安定化とは関連しないことが示された。その一方で、乳化物の不安定化が特に引き起こされる組み合わせが存在することが分かった。本研究では、乳化剤の脂肪酸部分の構造が乳化物の安定性にとって重要であることが示されたと考えられる。乳化剤を香気分析に応用するという実験では、油の合一によってフレーバーの放出挙動が変化する可能性の高いことが分かった。しかし、このような変化は香気成分の構造や性質によるところが大きく、放出の増減は化合物の疎水性によって異なっていた。このような知見は、食品の開発現場で生かされるものと考えられる。今後の実験では、物理化学的な指標に基づく香気成分の系統的な組み合わせと解析が必要となるであろう。油脂の抽出では、平成23年度に引き続きさまざまな条件における豆乳からの油脂分離抽出を試みた。一部で油脂の遊離が確認されたが、今後はより効率的な抽出法を検討する必要があると思われる。
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