研究課題/領域番号 |
23780134
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
西谷 洋輔 神戸大学, 自然科学系先端融合研究環重点研究部, 助教 (80457093)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 樹状細胞 / 腸管上皮細胞 / 食品因子 |
研究概要 |
樹状細胞は、宿主免疫システムにおいて、T細胞分化の方向性を担う重要な免疫担当細胞である。近年、腸管粘膜に存在する樹状細胞は、腸管上皮細胞と協働して免疫抑制性のT細胞を分化誘導することが明らかにされた。一方、食品由来成分が免疫システムの破綻に起因する炎症性腸疾患(IBD)などの慢性炎症において、動物レベルで予防・改善効果が多数報告されている。しかしながら、食品成分が上皮細胞を介して樹状細胞にどのような影響を及ぼすのか、依然として明らかになっていない。本研究では、in vitro培養系を構築し、免疫抑制能を有する樹状細胞へと誘導する食品成分の探索と、腸管上皮細胞を介した機序を明らかにすることを目的とした。 トランズウェルを用いて腸管腔側に腸上皮由来Caco-2細胞を、基底膜側にマウス骨髄由来樹状細胞を共存培養した系の構築を試みた。マウス骨髄由来樹状細胞は、骨髄より前駆細胞を採取し、既報に従いGM-CSFおよびIL-4存在下で培養した後、樹状細胞のマーカーとして知られるCD11cに対する抗体を用いて精製した。樹状細胞を活性化する因子としてLPSを基底膜側から添加した。このようにして基底膜側に炎症を起こさせた状態で、炎症マーカーとして樹状細胞からのTNF-α産生量およびCaco-2細胞中のIL-8 mRNA発現量を調べたところ、無刺激コントロールと比較して有意に増加した。さらに抗炎症薬として用いられているブデソニドを腸管腔側から添加したところ、樹状細胞からのTNF-α産生およびCaco-2細胞中のIL-8 mRNA発現が無刺激コントロールと同程度にまで有意に抑制された。現在、これまでに我々の研究室で免疫賦活能を有していることがわかっているキノコやコンブ由来多糖類あるいは乳酸菌について、本系に供試する実験を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウス骨髄由来樹状細胞を用いた実験条件の検討に時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に確立したin vitro実験系を用いて、Caco-2細胞を供試材料で処理すると同時に樹状細胞をLPSで刺激して樹状細胞からのTNF-α産生を誘導し、TNF-αによって刺激を受けたCaco-2細胞から分泌されるIL-8産生量(または発現量)を、供試材料未処理のCaco-2細胞からのIL-8産生量(または発現量)と比較し、供試材料の影響を調べる。次に免疫抑制効果が認められた食品成分については、in vivo IBDモデルとして知られるCD4+CD45RBhigh T細胞移入腸炎マウスモデル(またはデキストラン硫酸ナトリウム誘導性腸炎マウスモデル)を用いて炎症抑制効果を確認する。 樹状細胞は腸管上皮細胞と協働して免疫抑制性の制御性T細胞(Treg)を誘導することが知られており、その機序として上皮細胞から産生されるTGF-βおよびレチノイン酸(RA)に対し、樹状細胞がCD103(αEβ7インテグリン)を発現することからTregへの分化誘導に繋がると考えられている。そこで、免疫応答を抑制した食品成分について、確立したin vitro実験系に供試した際の腸上皮様細胞におけるTGF-βおよびALDH1A1(RA生成酵素)発現、および樹状細胞のCD103発現をリアルタイムPCR法およびウェスタンブロット法で解析する。上皮細胞においてTGF-βおよびALDH1A1に対する供試材料の影響が認められた場合、これらを制御するシグナル伝達経路の特定をウェスタンブロット法により行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞培養および動物実験関連の消耗品の購入を行う。また、研究の進捗状況により、ウェスタンブロット法の検出に必要な機器の購入を検討する予定である。
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