樹状細胞は、宿主免疫システムにおいて、T細胞分化の方向性を担う重要な免疫担当細胞である。近年、腸管粘膜に存在する樹状細胞は、腸管上皮細胞と協働して免疫抑制性のT細胞を分化誘導することが明らかにされた。一方、食品由来成分が免疫システムの破綻に起因する炎症性腸疾患(IBD)などの慢性炎症において、動物レベルで予防・改善効果が多数報告されている。しかしながら、食品成分が上皮細胞を介して樹状細胞にどのような影響を及ぼすのか、依然として明らかになっていない。本研究では、in vitro培養系を構築し、免疫抑制能を有する樹状細胞へと誘導する食品成分の探索と、腸管上皮細胞を介した機序を明らかにすることを目的とした。 昨年度確立した腸上皮由来Caco-2細胞とマウス骨髄由来樹状細胞の共培養実験系に、これまでに我々の研究室で免疫抑制能を有していることがわかっているシイタケ由来多糖であるレンチナンを供試した。その結果、樹状細胞からのTNF-α産生に変化は認められなかった一方、Caco-2細胞中のIL-8 mRNA発現がLPS刺激時と比較して有意に抑制された。これは、既に確立しているCaco-2細胞とマウスマクロファージ様RAW264.7細胞の共培養実験系にレンチナンを供試した際の結果と同様であった。レンチナンは、Caco-2細胞とRAW264.7細胞の共培養実験系においては、Caco-2細胞に作用し細胞表層TNFR1のエンドサイトーシスを引き起こすことでTNF-αに対する感受性を低下させることが新たに明らかになった。樹状細胞についても同様の機序が考えられるが、今後検討を進める予定である。
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