本研究では、フラボノイドを用いてユビキチンリガーゼの発現抑制を通じて廃用性筋萎縮を予防することを目的とした。研究計画では、フラボノイドのなかでもケルセチンを中心に研究を進めるとした。ケルセチンを摂取させることによりユビキチンリガーゼの発現を抑制するかは明らかにできなかったものの、筋萎縮にともなう酸化ストレスを抑制することが分かった。 筋萎縮を抑制した場合でも骨格筋成長に関わる体液性因子であるIGF-1の量に変化は無かったことから、この効果は骨格筋に直接影響した結果によると考えられた。骨格筋の分解と合成との分岐点であるAktのリン酸化については、ケルセチンによってリン酸化が向上した。この結果は、骨格筋の分解よりも合成の経路が活性化されていることを意味する。このように、食事性ケルセチンは、骨格筋での酸化ストレスを抑制し、骨格筋の分解を予防しうることが明らかとなった。 さらに、効果の高いフラボノイドとしてプレニルナリンゲニンを見出した。ユビキチンリガーゼの発現を抑制した。ユビキチンリガーゼの発現抑制には、PI3K-Akt経路が関与する可能性を明らかにし、学術論文として発表した。食品成分としての効果を考えるうえで重要な生体利用性についても検討したところ、血中への吸収は少ないものの、標的組織である骨格筋へ蓄積することがわかった。本研究の計画では、筋萎縮した場合にフラボノイドの蓄積性が変わるのではないかと予測を立てたが、その点については、正常な筋肉と萎縮のかかった筋肉との間に差は無かった。 本研究の成果は、フラボノイドが廃用性筋萎縮を予防するメカニズムとして、PI3K-Akt経路の活性化を見出した。抗酸化フラボノイドは、骨格筋内の酸化ストレスを減弱することも明らかにした。これらの成果が得られたのでフラボノイド含有食品の臨床試験を進めており、研究の発展につなげることができた。
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