研究課題/領域番号 |
23780141
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
原田 直樹 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (00529141)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | アンドロゲン受容体 / 膵β細胞 / インスリン / 機能性食品因子 / 高グルコース / 糖尿病 |
研究概要 |
(1)膵β細胞における男性ホルモン(アンドロゲン)シグナルの役割について糖尿病患者では血中のフリーテストステロンレベルが減少すること、また、前立腺がん患者にアンドロゲン除去療法を処方することによって糖尿病のリスクが上昇することから、アンドロゲンシグナルが糖代謝に関係することが示唆されている。本研究では、インスリンを分泌する膵β細胞におけるアンドロゲンシグナルの役割の解明に取り組んでいる。Wistar系雄性ラット(8週令)の膵臓組織切片を作製してアンドロゲン受容体(AR)の発現について検討した結果、ARは膵外分泌細胞よりも膵β細胞の核内に多く局在していることを明らかにした。さらに、β細胞の核内におけるARの発現レベルは2歳令のラットでは減少していたことから加齢にともなって減少することが示唆された。ラット膵β細胞株であるINS-1細胞から単離したARを高発現するINS-1 #6株では、テストステロンに依存したARの核内蓄積が観察された。INS-1 #6株において、テストステロンには増殖亢進作用に加えて、特定のアポトーシス誘導剤に対する抗アポトーシス作用持つことを明らかにした。さらに、INS-1細胞では、高グルコース条件下でARレベルが減少することを見出した。(2)インスリン分泌を促進する食品因子の探索日本人では、初期の糖尿病初期からグルコースに応答したインスリン分泌能の低下が頻繁に観察されることから、インスリン分泌促進作用を持つ物質の探索を行っている。ハムスターのβ細胞株であるHIT-T15細胞とINS-1細胞を用いてインスリン分泌を亢進する食品由来物質のスクリーニングを行い、両細胞でインスリン分泌亢進作用を発揮する物質を見出した。本物質は、INS-1細胞の増殖亢進作用を持つことも判明した。現在、本物質のインスリン分泌機構に関して検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)膵β細胞における男性ホルモン(アンドロゲン)シグナルの役割について概ね順調に進行しており、ラット膵β細胞においてアンドロゲンは有益な作用を持つことが予想される結果が得られてきている。(2)インスリン分泌を促進する食品因子の探索研究は順調に進行しており、培養細胞を用いてインスリン分泌促進作用を持つ食品因子をスクリーニングした結果、目的とする物質を見出すことに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)膵β細胞における男性ホルモン(アンドロゲン)シグナルの役割について転写因子として機能するARの標的遺伝子を検索することでテストステロンの増殖や抗アポトーシス作用について詳細なメカニズムを検討する予定である。また、高グルコース条件下でARが減少する機構に関して検討する。(2)インスリン分泌を促進する食品因子の探索見出したインスリン分泌促進作用を持つ食品因子の作用機構について検討する。また、インスリン分泌促進作用をマウスの膵臓から膵島を単離して検討する。さらに、膵β細胞におけるアンドロゲンと食品因子の協調的な影響についてインスリン分泌および細胞増殖に関して検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験を行うために必要な機器は既に揃っており、新たに購入する予定はない。研究費としては主に、試薬類(SDS-PAGE用、抗体、レポーターアッセイ用、PCR試薬等)、消耗品類(チップ、チューブ、ELISAプレート等)、培養細胞用(培地、牛胎児血清、ディッシュ、遺伝子導入用等)、動物実験用(マウス、餌、床敷、コラゲナーゼ等)が主となり、研究開始当初の予定から大きな変化はない。その他、成果発表に伴う学会への旅費と論文校閲代を見込んでいる。
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