研究課題/領域番号 |
23780143
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
安田 伸 東海大学, 農学部, 講師 (10512923)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 代謝物 / 抱合体 / 硫酸体 / 生理機能性 / フェノール性化合物 / ポリフェノール |
研究概要 |
これまで、生活習慣病予防またはリスク低減を企図した食品中機能性分子が生体リズムの調節を担う低分子化学物質の本体とされてきたが、最近では食品や薬剤摂取後に体内で生じる代謝物(=メタボライト)が直接要因となって体調調節機能を発現しうる事例が提唱されつつある。そこで、生体が有する代謝機構のうち、解毒代謝酵素による食品成分の生物代謝変換機構と食品由来「メタボライト」の新規な生理機能性について調べることとした。 モデル化合物としてシンプルフェノールであるp-nitrophenolとその代謝物である硫酸体ならびにグルクロン酸体の両抱合体を指標化合物に用いて3種類の異なる抗酸化活性試験における比較評価を行なった。その結果、p-nitrophenolは2,2’-azinobis(3-ethylbenzothiazoline-6-sulfonic acid) (ABTS)カチオンラジカルおよび1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl (DPPH)ラジカルに対してそれほど強い消去活性を示さず、その硫酸抱合体ならびにグルクロン酸抱合体も同じくこれらラジカルに対する消去活性は得られなかった。つぎに一酸化窒素(NO)消去活性試験による比較実験を行なったところ、p-nitrophenolのみにはっきりとしたNO消去活性が得られ、その硫酸抱合体ならびにグルクロン酸体では同濃度処理時に低活性値を与える事が判明した。これらの結果は、p-nitrophenolおよびその抱合体代謝物が機能性試験によっては差異を認めにくいものの、p-nitrophenolで認められたNO消去作用は代謝抱合化を経ることでその活性が負に調節されうることを含意している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、生体が有する代謝機構のうち、解毒代謝酵素による食品成分の生物代謝変換機構と食品由来「メタボライト」の新規な生理機能性について調べるものである。初年度には、「シンプルフェノール化合物および硫酸体の試験管レベルでの機能性試験を実施する」計画において、市販の入手可能なフェノール化合物としてニトロフェノールを指標化合物として機能性試験を行なうに至った。機能性評価については抗酸化活性試験の導入を行い、DPPHラジカル消去活性試験、ABTSカチオンラジカル消去活性試験、NO消去活性試験の導入を試み、まず陽性対照であるtrolox(合成抗酸化剤)を用いて実験条件の設定を行ったうえでp-nitrophenolおよび代謝物の機能性評価を実施することができた。 しかしながら当初計画していたスーパーオキシドアニオンラジカル消去活性試験、過酸化水素消去活性試験、2,2’-azobis(2-amidinopropane)dihydrochloride (AAPH)添加ロダン鉄法による脂質過酸化試験、dichlorodihydrofluorescein (DCDHF)酸化分解阻害活性試験の導入については現在試行中であるため、順次これらを含む抗酸化試験法や機能性評価法の導入を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に引き続き「シンプルフェノール化合物および硫酸体の試験管レベルでの機能性試験を実施する」計画を実施する。市販の入手可能なフェノール化合物としてニトロフェノールのほかナフトールならびにこれらの硫酸体あるいはグルクロン酸抱合体を指標化合物として用い、さらに抗炎症・抗アレルギー活性について機能性評価を行うこととする。 抗炎症活性試験には、ヒアルロニダーゼ活性阻害試験、リポキシゲナーゼ活性阻害試験の導入を試み、まず陽性対照であるタンニン酸、NDGA(抗炎症剤)を用いて実験条件の設定を行ったうえで機能性評価を実施する。当初予定通りに進まない場合には、シクロオキシゲナーゼ活性阻害試験など順次他の試験法の導入を行うものとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、消耗品費としてはおもに実験材料消耗品にガラス、プラスチック器具、試薬類の購入に使用する。なお当該年度には主として実験条件の設定や導入を行なったため、消耗品費として計上していたうち270,888円については、次年度に繰り越して継続して使用する。また次年度には、成果発表のための国内旅費を計上する。なお、1品又は1組若しくは1式の価格が50万円以上の物品の購入は予定していない。
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