研究課題
食品などに含まれる機能性分子は、これまで生活習慣病の予防またはリスク低減に重要な因子であると考えられてきた。近年、食品や薬剤摂取後に体内で生じる代謝物もまた直接要因となって我々の体調を調節する事例が提唱されつつある。本研究では、薬物代謝反応の過程で生じる代謝物の生理機能性の有無や新規な生理機能について探索することを目的とした。ポリフェノール類や薬剤などのフェノール性化合物は体内では代謝変換されることが知られる。例えば、フェノール性化合物の一部は第2相薬物代謝反応時に硫酸抱合化される。本研究では、硫酸化されやすい特性を持つニトロフェノール(p-NP)とその硫酸体(p-NPS)をモデル化合物として使用し、複数の抗酸化活性試験におけるこれらの生理機能性の有無や差異について比較評価することとした。試験管レベルでp-NPおよびp-NPSの抗酸化作用を調べた結果、p-NPSのほうがp-NPよりも強い活性酸素産生抑制作用を示す場合があることを見出した。最終年度にはヒト顆粒球様細胞の活性酸素産生に及ぼすp-NPおよびp-NPSの影響を調べた。その結果、細胞レベルでは逆にp-NPのほうがp-NPSよりも強い抑制作用を示したものの、p-NPSにもその効能の一部が認められた。以上より、フェノール性化合物によっては硫酸化代謝されることで生理活性が正または負に調節され、代謝物にも活性の一部が保持される可能性を見出した。現時点では十分量の食品由来硫酸化代謝物を確保するのが難しく、代謝物の合成法や精製法の確立の面から、今後も継続した研究を展開する必要がある。
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