研究課題
タンパク質システイン残基の酸化による翻訳後修飾により、さまざまなタンパク質が機能調節を受ける。本研究では、システイン残基を修飾するモデル化合物として、食品由来成分のdiallyl trisulfideを用い、その標的タンパク質の同定と作用機構の解明を行った。昨年度までに、diallyl trisulfideは薬物代謝酵素のCYP2E1の活性を阻害すること、その活性阻害にシステイン残基の酸化修飾が関係することを明らかにした。本年度は、まずdiallyl trisulfideによるCYP2E1の活性阻害機構を解明するため、酸化修飾部位の同定を行った。その結果、CPY2E1の437番目のシステイン残基のSH基を酸化的に修飾することを見出した。さらに、CYP2E1によって代謝されるchlorzoxazoneを用いて、in vivoでのCYP2E1活性を評価した。ラットにdiallyl trisulfideを投与すると、血中chlorzoxazoneのクリアランスが遅延したことから、diallyl trisulfideがin vivoでもCYP2E1活性を阻害することが明らかとなった。以上の結果から、システイン残基の翻訳後修飾により、その機能が調節されるタンパク質として、新たにCYP2E1を見出した。今後も、diallyl trisulfideをモデル化合物として用い、システイン残基の酸化修飾が引き起こされるタンパク質の同定を行うことで、食品成分による新たな機能性の発見やそのメカニズムの解明につながることが期待される。
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Journal of Food & Drug Analysis
巻: 20 Suppl 1 ページ: 309-312