低加圧二酸化炭素マイクロ・ナノバブル(MNB-CO2)による芽胞の失活:40℃、2 MPa でのMNB-CO2の芽胞に対する殺菌効果はほとんど認められなかったが、上記条件のMNB-CO2により芽胞を処理した後、加熱処理を行ったところ、加熱処理のみよりもD値が短縮した。 MNB-CO2が微生物細胞に与える影響:MNB-CO2の火落菌に対する殺菌効果は温度、圧力および溶液中のエタノール濃度の上昇に伴い高まり、緩衝液の種類および濃度に影響を受けることならびに緩衝液の初発pHが低いほど高まった。MNB-CO2処理中の加圧下での細胞外pHは初発pH 4以下の溶液中ではほとんど低下しなかった。MNB-CO2処理したビール酵母からのDNAおよびタンパク質の漏出量は生菌数が同じであるにも関わらず加熱処理後よりも少なかった。MNB-CO2処理したビール酵母のPropidium Iodide蛍光強度は加熱処理よりも弱かった。さらに、MNB-CO2処理したビール酵母細胞内の酵素失活を確認した。よって、MNB-CO2によるビール酵母の殺菌は細胞膜等の損傷ではなく、細胞内に浸透したCO2による細胞内の酸性化もしくは細胞内基質の変性によることが示唆された。 MNB-CO2が食品品質に与える影響:MNB-CO2により生酒中の火落菌の失活が可能であった。MNB-CO2により酒中の香気成分は20%程度減少したが、その損失はすぐに冷却することで防止可能であり、さらに官能評価によりMNB-CO2処理酒の有効性が示唆された。MNB-CO2によりろ過前のビール内の酵母を完全に殺菌可能であり、各ビールの香気成分量は未処理、MNB-CO2および加熱ビールで大きな違いはなかったが、官能評価によりMNB-CO2ビールは未処理ビールに近く、加熱ビールよりも良い結果となった。
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