研究課題/領域番号 |
23780147
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
日坂 真輔 名城大学, 薬学部, 助教 (60583838)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | アシル化 / 脂質過酸化 / 翻訳後修飾 |
研究概要 |
本研究では、生体内における酸化ストレスを評価し得るバイオマーカーに着目し、その検出・定量法の構築を目指すものである。特に着目するバイオマーカー候補としては、タンパク質における酸化ストレス起因の修飾構造である点に加え、その修飾を受けたタンパク質が酸化ストレスと関連する疾病の発症に寄与し得る可能性を有するものを考えている。この修飾構造としては、脂質過酸化に由来するアシル化構造に着目し、その修飾構造を有するタンパク質の配列を選択的に検出・定量解析可能な検出法を構築することで、本バイオマーカーを疾病の発症との関連を定量的に示唆し得るものとして確立することが最終目標である。このような目的を踏まえ、当該年度において標品となるアシル化構造を有するペプチドの合成を行った。原材料となる保護基としてのFmoc基を有するPropanoyl-lysine (PRL)を合成及び精製し、修飾構造を有する変性タンパク質中における予想されたペプチド配列中で、合計12残基のアミノ酸を有するペプチドを合成した。本ペプチドを高速液体クロマトグラフィー質量分析器(LC/MS/MS)における分析へと供したところ、微弱ながら本ペプチド由来のピークを観察することが出来た。これによって、方法論として質量分析器による評価は可能だと考えられるものの、今後は、同一タンパク質内でも違うリジン部位における修飾部位の同定を行うとともに、より感度良く検出することが可能なペプチド配列を探索する必要性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の目的を達するにあたって、最初にクリアすべき点が2点は考えられた。1つ目が、そもそもの修飾構造を有するペプチド配列が合成可能かどうかである。これは、Fmoc構造を保護基として用いたリジンをPRL化し、ペプチドを実際に合成できたことによって達することが出来た。次いで、2つ目としては、LC/MS/MSを用いての検出が実際に可能かどうかである。これは標品を用いた検出で微弱ながらも認められた点で達することは出来ていると考えられるものの、実際の生体試料を考えた場合、より感度良く検出できる必要性が出てくるものと考えられる。したがって、この点に関しては達成するための創意・工夫が必要になってくるものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては、より感度良く検出することが可能なペプチド配列の探索が挙げられる。すでにペプチドでの質量分析器を用いた検出は可能であることが示唆されていることから、この方向性から進めていくことが挙げられる。加えて、アシル化の修飾部位のリジン残基の同定数を増やすことが上記のペプチド配列の選択肢を増やすことにつながるため、この点を並行して進めることが挙げられる。以上の点を達した後に、安定同位体標識された修飾部位を含むペプチド配列を合成・精製し、最終的な定量法としての構築を試みる予定である。その後、神経変性疾患モデルマウス (アルツハイマー病モデルマウス:Tg2576マウスなど) における生体試料中からの検出・定量を行う方向性が考えられる。したがって、当初の実験計画を鑑みて、進行速度としてはやや遅れ気味に考えられるものの、達成すべき点などはクリアされていると考えられる。しかしながら、本研究を遂行する上での問題点としての検出感度が達せられない可能性も考えられるため、並行して新たなアプローチ法の検証も行う必要性が考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に研究費を使用する内訳は、追加のペプチドの合成及び質量分析器に使用する消耗品費 (申請時にも計上済) が挙げられる。加えて、推進方策にも挙げた新たな修飾部位の探索を行うため、平成23年度に購入した2次元電気泳動装置にかかる消耗品に費用を計上する予定である。定量法の構築後は、実際の生体試料を用いた検証を行う予定のため、実験動物としてモデル動物の購入及び維持費用を年度中盤から後半にかけて計上する見込みが挙げられる。また、新たなアプローチ法を並行して検証する予定であるため、その検証にかかる費用も計上する見込みである。
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