研究課題/領域番号 |
23780149
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
渡辺 純 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所・食品機能研究領域, 主任研究員 (10374729)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 食物アレルギー / 腸内常在細菌叢 |
研究概要 |
本研究では申請者らが確立したDO11.10マウスにおける食物アレルギー動物モデルを用いて、(1)経口抗原感作による腸内常在細菌叢変化を明らかにし、(2)この菌叢変化とアレルギー増悪との関連性を明らかにするとともに、(3)腸内常在細菌叢の改変によるアレルギー抑制の可能性を探ることを目的としている。(1)に関しては、抗原未感作群と抗原感作群の盲腸内容物から抽出したDNAを鋳型とし、16S rRNA配列に基づくPCR-DGGE法を行ってバンドパターン解析を行うことにより、両群の菌叢が異なることを示した。Bifidobacteriaおよびlactobacilli特異的プライマーを用いた定量PCRにおいては、感作の有無による差は認められなかった。現在、特徴的に変動したDGGEバンドの塩基配列解析、16S rRNAクローンライブラリの構築により感作によって特徴的に変化する菌種の特定を行っている。(2)については、DO11.10マウスの繁殖効率の問題から進行が遅れ気味であるが、親世代の抗原感作が仔でのアレルギー発症に及ぼす影響を解析している際、授乳期間中に抗原を経口投与すると仔マウスにおいても感作が誘導されることが新たに明らかとなった。すなわち、BALB/c雌性マウスとDO11.10(+/+)雄性マウスを交配し、出産直後から母マウスに抗原投与を行い、仔の4週齢時の特異的抗体価を調べたところ、授乳中の抗原投与により仔での顕著な特異的抗体価の上昇が見られた。来年度は当初の計画に加え、観察された仔での免疫応答変化および生育後のアレルギー発症への影響を詳細に検討するとともに、感作が分泌される母乳に含まれる抗原によるものか、抗原投与期間中の血中OVA濃度を測定することにより検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記記載の実績の概要の内、(1)については経口抗原感作により腸内細菌叢が変化することをPCR-DGGE法を用いて明らかにすることができ、さらに詳細な菌叢解析を実施しているところである。(2)については、マウスの繁殖効率が悪く計画と比較して進行がやや遅れているが、繁殖効率の問題は解決されつつあり、来年度以降は計画に基づく実施が可能となるものと考えている。また、計画には記載していなかったが、授乳期間中の抗原投与により仔が抗原感作を受ける可能性が示され、その詳細な解析を今後実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、マウスを効率的に繁殖させるために飼育環境をはじめとする条件を検討し、繁殖効率が改善した。来年度以降は、母の腸内細菌叢変化や授乳中の抗原感作が、仔世代での免疫応答に及ぼす影響の解析が研究計画に基づき可能になると考えている。また、幼少期の腸内細菌叢の解析に実績のあるニュージーランドオタゴ大学Tannock教授との研究連携も検討している。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題の推進のため、次年度の研究費は、交付申請時の計画どおり、物品費・旅費に使用する。
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