研究課題/領域番号 |
23780149
|
研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
渡辺 純 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所食品機能研究領域, 主任研究員 (10374729)
|
キーワード | 食物アレルギー / 腸内細菌 / 経母乳感作 |
研究概要 |
本研究では申請者らが確立したDO11.10マウスにおける食物アレルギー動物モデルを用いて、①経口抗原感作による腸内常在細菌叢変化を明らかにし、②この菌叢変化とアレルギー増悪との関連性を明らかにするとともに、③腸内常在細菌叢の改変によるアレルギー抑制の可能性を探ることを目的としている。 今年度は②の解析中に明らかとなった、授乳期間中の親世代への抗原の経口投与が、仔マウスにおいても感作を誘導するという新たな現象について集中的に解析を行った。BALB/c雌性マウスとDO11.10(+/+)雄性マウスを交配し、出産直後から母マウスに抗原投与を行い、仔の4週齢時の特異的抗体価を調べたところ、授乳中の抗原投与により仔での顕著な特異的抗体価の上昇が見られた。また、抗体価の上昇は投与する抗原量が同一であっても、投与のパターンにより異なり、抗原投与に休止期間を設けずに連続的に投与した群で最も高値を示した。観察された抗体価の上昇は一過的であり、10週齢時の特異的抗体価は、母への抗原投与を行わなかった群と同程度までに低下した。調製した仔の脾細胞を抗原で再刺激したところ、母への抗原投与によりIgE産生量が上昇する傾向が見られた。現在、この動物に抗原特異的なアレルギー症状を誘導し、母への抗原投与の影響を調べている。③に関しては、AIN93Gをベースとした精製飼料と非精製飼料をDO11.10 (+/+)マウスに投与・飼育した結果、両群の腸内細菌叢が異なることをDGGE解析により明らかにするとともに、抗原特異的アレルギー症状の程度が異なる可能性が示唆され、現在詳細な検証を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年8月より平成25年8月まで長期在外派遣のため、期間を平成25年度までに延長し研究を実施している。派遣のため達成度はやや遅れているが、上記記載の実績の概要の内、②については、計画には記載していなかったが、授乳期間中の抗原投与により仔が抗原感作を受ける可能性が示され、その詳細な解析を実施している。また、③についても飼料の違いにより腸内細菌叢変化を介してアレルギー症状の程度が変化する可能性が示唆され、25年度は詳細な解析を実施する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
研究に用いるマウスの繁殖効率が改善し、母の腸内細菌叢変化や授乳中の抗原感作が、仔世代での免疫応答に及ぼす影響の解析が研究計画に基づき可能になると考えている。また、幼少期の腸内細菌叢の解析に実績のあるニュージーランドオタゴ大学Tannock教授との研究連携を開始し、塩基配列を元にした菌叢解析のみならず、マウス消化管内容物からの菌の分離、その投与によるアレルギーへの影響の解析等も可能になると考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題は平成25年度まで延長して実施することとなった。本研究課題の推進のため、次年度の研究費は、物品費・旅費に使用する。
|