研究課題/領域番号 |
23780151
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
高畠 令王奈 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所・食品分析研究領域, 任期付研究員 (20463466)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 遺伝子組換え / 検知 / 定量分析 / 簡易迅速 / 効率化 |
研究概要 |
今年度は、DNA IDタグのグランドデザインおよびDNA IDタグ導入植物の作出を行った。(1)DNA IDタグおよびそのCommonプライマー塩基配列の検討DNA IDタグに関しては、文字情報・数字情報および特殊記号を塩基配列によって表現する必要があることから、A~Zまでのアルファベット、0~9までの数字、さらに、ハイフン(-)やピリオド(.)、カンマ(,)といったものを3塩基連鎖を1情報として対応させた暗号表を作成した。アルファベットは、コドン表におけるアミノ酸の一文字表記をそのまま踏襲して使用した。アミノ酸の一文字表記に使用されていないアルファベット(J, O, U等)には、適当な3塩基連鎖を対応させた。それ以外の数字および特殊記号に関しても同様に、3塩基連鎖を1情報として対応させた。増幅用Commonプライマー配列に関しては、ニワトリのコラーゲン遺伝子とナットウキナーゼ遺伝子から、それぞれ2種類ずつ特異的プライマーを設計した。設計の際には、非特異的な増幅をできるだけ抑えるために、既知の植物ゲノム中に類似した配列が無いようデータベース等を参照し、また、プライマーダイマーが形成されないように、GC含量やTm値を考慮した。(2)(1)で合成したDNA IDタグ配列を植物形質転換用ベクターに組込み、アグロバクテリウム法により、イネ(日本晴)に遺伝子導入を行った。(3)(2)の形質転換植物から、複数の形質転換体ラインを選抜し、PCR法により、DNAタグ配列が導入されていることを確認した。さらに、インバースPCR法により、組換えDNAの周辺配列を読むことによって、染色体番号を含む、イネゲノム中での挿入位置を決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までのところ、「DNA IDタグのグランドデザイン」および「DNA IDタグ導入モデル植物の作出」共に、ほぼ予定通り順調に進んでいる。本研究では、DNA IDタグシステムの有効性を検証するために、導入した形質転換イネと非形質転換イネを様々な重量比で混合した疑似混入試料を調製・分析し、定量法の妥当性確認までを最終目的としている。定量分析では、疑似混入試料からゲノムDNAを抽出し、real-time PCR法によってDNAのコピー数を測定する予定であるが、real-time PCR定量法は、相対定量であることから、組換え配列のコピー数と比較するためのイネの内在性配列の存在が不可欠である。我が国の遺伝子組換え体検知に関する標準分析法では、ダイズやトウモロコシの内在性配列が規定されているが、内在性配列として必要な条件としては、その作物に固有であり、かつゲノム内に1コピーのみ存在する、といったことが挙げられている。イネは、極めて多用な品種が世界中で栽培されており、さらに、インディカ、ジャポニカという亜種まで存在する。加えて、コムギ、オオムギ、トウモロコシ等、イネ科の穀物も数多く存在することから、このような、イネの種特異的内在性配列の検討には、予想外の困難を強いられる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、得られた形質転換イネより、ゲノムに単一コピーで導入された系統を選抜し、純系ホモ化させた種子を単離する。また、形質転換イネのゲノムDNAを用いて、プライマー及びプローブの特異性等を確認する。最終的には、形質転換イネと非形質転換イネを様々な重量混合比で混合した疑似混入試料を調製し、デザインされたCommonプライマーおよびDNAプローブを用いて定量分析を行い、DNA IDタグが予想通りに機能するか確認する。定量分析には、疑似混入試料から抽出したゲノムDNAを用いて、Common プライマーとDNAプローブを用いたreal-time PCR、TaqMan法によって行う。real-time PCRによる定量法は相対定量であることから、検量線を引くためのスタンダードが必要である。我が国の遺伝子組換え体検知に関する標準分析法では、組換え配列と作物の内在性配列が共に組み込まれた標準プラスミドをスタンダードとして利用しているが、本研究においても、このような標準プラスミドを作製する必要がある。そのために、イネの種特異的内在性配列を検討する。最終的には、組換え配列と内在性配列のDNAのコピー数を算出し、重量混合比へと変換する。この様にして得られた定量結果と、元の疑似混入試料の混入率を統計学的に比較することにより、定量分析法の性能指標を評価する。DNA IDタグ導入イネには、タグ配列だけでなく、カリフラワーモザイクウイルス35プロモーター(P35S)配列も導入されている。P35S配列を用いた定量法は既に実用化されていることから、DNA IDタグ部分だけでなく、P35S配列も用いて定量し、結果を比較することによって、定量分析法の精度や検出限界および定量限界を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題の推進のため、次年度の研究費は、交付申請時の計画どおり、物品費および旅費に使用する。なお、次年度使用額85,882円は、今年度の研究費を効率的に使用して発生した残額であり、次年度に請求する研究費と合わせて、研究計画遂行のために適切に使用する。
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