わが国では、遺伝子組換え(GM)食品及び農産物の表示義務があり、そのための検査が行われているが、GM作物の数が増え続けていることから、近い将来、流通する全てのGM作物を検査することが事実上不可能となり、遺伝子組換え表示の実効性が破綻してしまう可能性が危惧されている。そこで、本研究では、検知に適した領域を後から探索するのではなく、GM品種の情報等が塩基配列の状態で書き込まれた領域を、共通プライマー(以下、Common プライマーと記述)で挟んだ塩基配列をGM植物に導入し、一種のIDタグとして利用するシステムを開発し、その有用性を検証するためのモデル実験を行った。本技術を利用することにより、簡便かつ正確なGM農産物の検出・同定さらに定量までが可能になるものと考えられる。また、GM品種の種類や数に影響されずに検出ができ、さらに、GM作物品種固有の塩基配列を認識するDNAプローブ(Common プローブ)を利用することによって、同定も同時に行うことが可能か検証した。 初年度は、DNA IDタグのグランドデザインおよびイネにDNA IDタグを導入したGM植物の作出を行った。次年度では、作出したDNA IDタグ導入イネ5系統からゲノムDNAを抽出し、ゲノミックサザン解析により、ゲノム中に単一コピーで導入された系統を複数選抜した。また、これらIDタグ導入イネのゲノムDNAを用いて、Commonプライマー及びCommonプローブの特異性等を確認した。 これらの結果から、本技術は想定通りに機能することが確認された。 最終年度では、得られた種子を継代培養し、次世代での導入配列の安定性を確認した。さらに、論文執筆等に向けて研究成果の取り纏めを行った。
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