研究課題
常に外界(異物)に曝される胃腸粘膜には、様々な防御システムが備わっているが複雑がゆえに不明な点も多い。研究代表者らは、胃腸粘膜上皮の粘液分泌細胞に特異的に発現する細胞内プロテアーゼ、カルパイン8(CAPN8)とカルパイン9(CAPN9)が、複合体G-カルパインを形成して、外的ストレスに応答して作動する胃粘膜防御システムに働くことを明らかにし、また、腸管免疫への関与を示唆する結果を見出してきた。本年度は、昨年度に引き続き(1)G-カルパインによる胃粘膜防御メカニズムの検討と、(2)CAPN8とCAPN9の複合体形成の意義解析を行い、さらに、(3)G-カルパインが関わる腸管免疫機序の解析を行った。(1)について、Capn8KOマウスとCapn9KOマウスの胃に対してアルコール以外によるストレスを与えた時の影響を検討した。ヘリコバクター・ピロリを野生型マウスおよび上記KOマウスに投与して一定期間後に胃の炎症を評価したが、実験操作の問題で同じ遺伝子型のマウスで炎症の程度にばらつきが生じてしまい、ヘリコバクター・ピロリ投与の影響をうまく見ることができなかった。(2)について、欠失変異体や点変異体を用いてCAPN8とCAPN9の相互作用部位を特定した。また、構造解析を行うため、これまでCAPN8とCAPN9のリコンビナントタンパク質発現に用いていた小麦胚芽無細胞系に代わる、大規模発現が可能なバキュロウイルスによる発現系確立を目指し、十分な力価を持つ組換えウイルスを得た。(3)について、CAPN8とCAPN9の腸管Th17細胞分化制御への関与を検討した。まず、CAPN8とCAPN9が血球系細胞に発現するか調べたが、発現しないことを確認した。次に、腸管Th17細胞分化に必須な腸内細菌の存在がCAPN8とCAPN9の活性化に及ぼす影響を調べた。野生型マウスとgerm-freeマウスの腸管におけるCAPN8とCAPN9挙動を調べたが変化は見られなかった。現在、他の可能性について検討している。
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