研究課題/領域番号 |
23780154
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中路 達郎 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助教 (40391130)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 有機物分解 / 非破壊測定 / 森林 / 温暖化 |
研究概要 |
温暖化をはじめとする気候変動によって地中の炭素循環が大きく影響を受けることが示唆されているものの、そのメカニズムが不明なため、その解明が必要とされているが、森林における植物根と植物遺体由来の有機物の動態にはいまだ不明な点が多く、野外における観測手法の開発とメカニズム研究の両面の充実が急務となっている。特に、連続かつ非破壊で地中の有機物動態を観測する手法は開発されておらず、樹木根の成長や生死、分解過程の判断と連続観察には問題が多く、まだ世界共通の測定や基準はほとんどないのが現状である。このため、本研究では、植物組織の構造や有機物組成に関連する情報を得られる近赤外波長の分光反射画像を取り入れた、新しい動態観測手法の開発を目指している。初年度では、まず、地中の有機物動態を観測する小型の可視-近赤外分光カメラの開発を行った。小型CCDカメラを改造して近赤外波長に感度を持たせ、可視・近赤外域の小型光源の開発を行った。野外で観測を行うことを念頭に、筒型の観測用パイプあるいは箱型ケース(A4大)で観測できる匡体を作成し、撮影システムを構築した。光学機器の性能評価を行ったところ、地中においても可視・近赤外画像ともに、高空間分解能(約300dpi)で撮影することが確認でき、従来の撮影手法と比較可能な画像の取得に成功した。また、次年度に向けた実際の観測準備として、森林内で温暖化操作を行い、その林床に観察用の透明アクリルパイプおよびA4型ケースの埋設を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たな小型分光画像観測システムを構築することができたため、次年度以降の野外観測の目途が立った。
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今後の研究の推進方策 |
苫小牧の冷温帯落葉広葉樹林において、地中の温暖化操作実験を行い、そこに埋設した観察窓から、実際の根圏の観測を行う。開発した観測システムには、まだ野外の実用にむけた小形化などの改造が必要で、特に、光源と電源関係の小型化を行う必要がある。これらの改良と同時に、地中における根や有機物の動態を明確にするため、土壌を掘り起こした実験も合わせて行う。掘り出したサンプルの画像撮影ならびに、理化学性の測定を予定している。リグニンやセルロースといった分解速度の異なる有機物の含量や根色などの計測をおこなう。これらによって、光学情報と地中の炭素動態との関連性を明確にする。
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次年度の研究費の使用計画 |
機材の開発において、高感度カメラや電源関係の改良などに消耗品が必要となる。有機物の分解評価のために分析実験を行うが、そのための消耗品類を購入し、また、分析を行う専門的な技能を持つ実験補佐員を謝金対応で雇用する。本年度予算の残額に関して、機材購入経費の削減の結果生じた使用残は、観測システムの改良にかかわる光学機器の購入に使用する。また、旅費残金に関しても、国内外の学会発表(日本生態学会、日本森林学会など)への参加費用として使用する予定である。
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