研究課題
本申請課題では、火山灰土壌や褐色森林土に成立する森林において、伐採(皆伐および間伐)が渓流水による窒素流出に与える影響を明らかにすることを目的として、以下の課題を行う予定である。1.様々な土壌環境に成立する森林での伐採(皆伐および間伐)が渓流水質(特に硝酸態窒素)に与える影響を明らかにする。2.伐採後の土壌中の形態別炭素・窒素量の経時的変化を明らかにする。3.褐色森林土、黒ボク土などわが国で一般的な土壌との比較から未熟黒ボク土の特徴を明らかにする。4.成果を統合し、伐採インパクトに対する応答を表現できる土壌炭素窒素動態モデルを開発するとともに、簡易な伐採インパクトに対する森林生態系の影響評価法の開発を行う。平成23年度は、課題1に関連して、鹿児島大学高隈演習林において、2005年の伐採前から行っている皆伐流域(2005冬に伐採完了、その後スギ植林区6ha・放置区6ha)と森林流域(30ha)の渓流水質のモニタリングを引き続き行った。また京都大学北海道研究林において新たに伐採試験を行う流域の検討を行った。課題2に関連して、鹿児島大学高隈演習林内に設けた伐採からの経過年数の異なる調査区において採取した土壌、植物体試料の化学分析を進めた。また新たに京都大学北海道研究林において伐採試験を行う調査区の検討を行った。課題3に関連して、日本各地から採取した土壌の環境DNAを採取し、土壌窒素代謝に関連する微生物群集のメタゲノム解析用試料を得た。今後、海外機関の共同研究者とともに解析を進める予定である。また採取した土壌の化学分析を行った。課題4に関連して、伐採試験が進行している鹿児島大学高隈演習林において、土壌地温などの環境データの観測を行った。
2: おおむね順調に進展している
採択と同時に勤務先が異動になり、当初予定した伐採試験を行うことが困難となったため、新たな候補地の選定を進めた。定期観測に関しては現地協力者の助力もあり、概ね順調に進められた。
当初計画していた伐採試験の開始が1年遅れる見込みであるが、今年度は伐採前の状況についての観測を開始する予定である。また渓流水モニタリングに関しては、現地の協力体制を確保し継続して行う予定である。
当初予定した鹿児島大学高隈演習林での伐採試験は実行が難しくなったが、京都大学北海道研究林において、新たに伐採試験を行う予定である。鹿児島大学高隈研究林での水質モニタリングは継続して行う。また様々な土壌タイプの化学性の比較研究も進める予定である。以上の計画を踏まえ、物品費は主に、渓流水や土壌の化学分析用の研究備品や試薬の購入に充てる。旅費は、鹿児島大学高隈演習林での野外調査と研究打ち合わせ、日本各地の土壌採取、機器分析などを行うための国内旅行費に充てる。人件費・謝金は、試料の前処理などの謝金に充てる。その他に関しては、試料の宅急便代や成果報告のための英文校閲費に充てる。50万を超える物品の購入予定は現在のところはない。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (3件)
Agricultural and Forest Meteorology
巻: 151 ページ: 854-863
Journal of Forest Research
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