研究課題/領域番号 |
23780168
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
本橋 慶一 東京農業大学, 地域環境科学部, 助教 (10527542)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ハナノキ / Phyllosticta minima / 同定 / 病害 / 診断 |
研究概要 |
レッドリスト絶滅危惧II類種に指定され、且つ日本固有種であるカエデ科ハナノキの葉に植物病原菌Phyllosticta属の関与が疑われる斑点性病害が長野県、岐阜県、愛知県で激発している。この病害に関する研究は国内では全く行われていない。そこで貴重種ハナノキの保全を目的として病害防除の基礎資料および迅速で的確な診断を行う技術を構築し、本病害防除の確立を目的として研究を行っている。 本年度は、長野県内におけるハナノキ自生地の病害調査を行い、これまで行われていない被害分布を明らかにすることを目的として研究を行った。ハナノキ自生地の長野県飯田市下伊那郡阿智村伍和の2カ所および同市箱川、大町市大町の4カ所にて調査を行った結果、いずれの地域でも同様の斑点性病害が認められ、病害標本を収集した。得られた病害標本からはプレパラート標本を作製し、形態的特徴を精査した結果、Phyllosticta属菌の一種が観察され、本菌をPhyllosticta minima (Berk. & M.A. Curtis) Underw. & Earle と同定した。また、それぞれの病害標本から本菌の分離菌株を確立した。 長野県内におけるハナノキ自生地の病害発生分布を網羅的に調査した結果、すべての地域で斑点性病害が発生していることを初めて明らかにした。今回の調査では、罹病していない健全なハナノキは観察されず、その病害の深刻さ再認識すると共に、早急な病害防除の必要性が考えられた。また、ハナノキ自生地付近で観察されたカエデ科には病害発生は観察されず、本病害は宿主特異的である可能性が高いと考えられた。本病害の病斑から観察された植物病原菌P. minimaは、国内初記録となった。本菌は主に北米でサトウカエデに発生する病害として知られている。海外で発生している病害と本病害の関連性についても改めて調査する必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハナノキはカエデ科に属する落葉樹で、レッドリスト絶滅危惧II類種に指定されている日本固有種でもある。申請者は、ハナノキの葉に植物病原菌Phyllosticta属の関与が疑われる斑点性病害が長野県、岐阜県、愛知県で激発していることを病害標本採集により認めた。この病害に関する研究は国内では全く行われておらず、その発生報告および病名も与えられていない。そこで本研究では、ハナノキの保全を目的として病害防除の基礎資料および迅速で的確な診断を行う技術を構築し、本病害防除の確立を目的として研究を行っている。 平成23年度の研究では、長野県、岐阜県および愛知県のハナノキ自生地を中心に病害発生消長を調査し、被害状況および被害分布を明らかにする事を目的として研究を行った。加えて、斑点性病害標本の採集を各地で行い、その分離菌株を確立することを試みた。 長野県、岐阜県および愛知県のうち、長野県に自生するハナノキの調査を行った結果、主な自生地である4カ所から病害標本を採集し、いずれの地域からも同様の斑点性病害に罹病していることを明らかにした。また、病害標本からそれぞれ国内初記録となるPhyllosticta minima (Berk. & M.A. Curtis) Underw. & Earleの寄生を確認した。加えて、病害防除の基礎資料を作成する上で重要となる分離菌株の確立に成功した。 愛知県および岐阜県における調査は未調査であるものの、国内ハナノキ自生地の多くを占める長野県の病害調査およびその分布を明らかにし、標本の採集、分離菌株の確立、寄生菌の同定を行い、ほぼ計画通りに研究を進め初期目的を達成した。従って、23年度の研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究として一つめに、23年度の研究結果から得られたハナノキに寄生していたPhyllosticta minimaを用いて、病原性の確認を行うために接種試験を行う予定である。しかしながら、本種を含むPhyllosticta属菌は含菌寒天貼付法による接種試験の成功率が極めて低く、罹病していない健全なハナノキを得ることが困難である。二つめの研究として、病害防除の基礎資料となる本病害の感染ルートおよび感染源の特定を調査する。申請者はこの問題点を以下の方策によって行うものとする。・ 接種試験には、申請者が考案する分生子懸濁を利用した接種試験を行い、健全な苗を確保するために、実生から苗を生育させる。・ 感染ルートおよび感染源を特定するために、分子生物学的手法を用いて、迅速で的確な診断を行う。・海外で発生している病害と比較検討するために、海外から病原菌を輸入し調査を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度には主に次の研究を行う予定である。・ 未調査の岐阜県および愛知県での病害調査および、引き続き長野県での病害発生消長の調査。・ 病害防除の基礎となる、分離株による接種試験の調査。・ 海外で報告されている病原菌との比較および感染源特定を遺伝子レベルで行うために、多くの分離菌株を確立。以上の研究を遂行するために、研究費は主に、病害調査の旅費、分離菌株確立のための実験器具、試薬および遺伝子研究のための試薬、関連図書の購入に使用する予定である。
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