研究概要 |
キノコ類に含まれるβグルカンの一部は抗腫瘍作用を示すが、精製が困難、構造が複雑で、モデル材料を合成する手段もない為、その作用に関する分子レベルでの解明が進んでいない。本研究では、キノコ類から単離したβグルカナーゼの糖転移活性を利用して、各種βグルカンを人為的にデザインする手法を確立することを目的とした。 平成24年度は新たに担子菌スエヒロタケから糖質加水分解酵素(GH)ファミリー30に属するβ-1,6グルカナーゼ(ScPus30A)をクローニングし、こうじ菌(Aspergillus oryzae)で異種発現させた。SDS-PAGE上で分子量は57,000と推定された。他のGH30酵素群とのマルチアライメントから、207番目と302番目のグルタミン酸が活性中心残基であると予想された。そこで、それぞれについてアラニン、グリシン、セリンの変異体を作成し異種発現させた。これら変異酵素とフッ化糖(α-フッ化グルコピラノシド)を用いてβ-1,6グルカンの合成反応を検討したが、合成反応は認められなかったことから、本酵素群を用いた合成反応にはフッ化ゲンチオオリゴ糖が必要であると予想された。そこでオリゴ糖の合成用にイネいもち病菌のGHファミリー2種についても合成酵素化を行い計6種類の変異酵素を得た。これらを組み合わせることでβグルカンの酵素合成が可能になると考えられる。 一方で、担子菌ウシグソヒトヨタケよりGHファミリー16に属する酵素をクローニングし、上記と同様にこうじ菌で異種発現させた。コンブ由来のβ-1,3/1,6グルカンであるラミナリンを本酵素で分解させたところ、主生成物としてβ-1,6結合でグルコース側鎖をもつβ-1,3グルカン3糖および4糖を得ることができた。これらオリゴ糖を材料に機能性グルカンを調製できる可能性がある。
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