本研究は、植物免疫システムの上流部に位置するエリシター受容体遺伝子に着目して、クロマツの抵抗性および感受性個体を利用した遺伝子構造および遺伝子発現の比較解析、さらに実生後代における遺伝子型と表現形質の関連性を検証し、マツノザイセンチュウ抵抗性遺伝子の単離を行う。 平成24年度は、平成23年度に単離したエリシター受容体遺伝子(LRR型遺伝子)についてDNAマーカーを作成し、抵抗性および感受性家系を利用して、連鎖地図へのマッピングと抵抗性形質の関連性について検証した。平成23年度に単離したエリシター受容体遺伝子は、クラスター解析の結果、大きく2群に分かれ、遺伝子ファミリーを構成していることが推定された。さらに、それぞれのクラスターを構成する遺伝子を連鎖地図上にマッピングした結果、2つの異なる連鎖群上に座乗していることが分かった。 連鎖地図を作成した抵抗性家系96個体について、マツノザイセンチュウを接種し、接種後1週間、さらに7週間後の形質(5段階評価および3段階評価)を利用してQTL解析を行った。その結果、エリシター受容体遺伝子が座乗する連鎖群上にはQTLが検出されず、異なる連鎖群上に比較的寄与率の高いQTLが検出された。この結果から、今回単離したエリシター受容体遺伝子は、マツノザイセンチュウ抵抗性には関与しておらず、異なる遺伝子(座)がマツノザイセンチュウの抵抗性形質に関与していることが推察された。
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