研究課題
1. アカマツの雌雄配偶子レベルでの年次間の遺伝的異質性が散布種子段階の遺伝的多様性にもたらす寄与(Iwaizumi et al. 2013b)景観スケールでのアカマツの遺伝的多様性把握に先立ち、2003年~2007年の連続した5ヵ年にわたり、阿武隈高地森林生物遺伝資源保存林(福島県いわき市)内のアカマツ1集団内での散布種子(計1,576種子)の遺伝的変異を詳細に解析した。胚と雌性配偶体(母親由来の半数体)の組織別に核SSR分析を行い、雌雄の配偶子の遺伝的変異を正確に区別して評価した。その結果、配偶子の雌雄間での異質性は年次間での異質性よりも大きく、また雌性配偶子の年次間での異質性は、雄性配偶子のそれよりも高い値を示した。当該樹種の集団内での遺伝的多様性を複数年次スケールで評価したことにより、個体ごとの雌雄繁殖成功度の相対的な違いに加え、雌性繁殖成功度の年次間での変動が大きく寄与していることが明らかになった。2. アカマツ散布種子の景観スケールにおける2年間の遺伝的多様性(岩泉ら 2014)上記1. の集団を含むアカマツ9集団において、2010年及び2011年の2ヵ年にわたり、各3台、計27台の種子トラップにより収集した散布種子(計1,296種子)の雌雄配偶子の遺伝的変異を解析した。その結果、成木個体数が200未満の集団で特に、雌性配偶子の遺伝的多様性の低いトラップが見られた。雌性配偶子の集団間・トラップ間の遺伝的分化度は2ヵ年を通じていずれも有意であり、雄性配偶子のそれよりも高い値を示すとともに、雌性配偶子では200m以内の近距離のトラップ間で有意に遺伝的組成が類似していた。当該樹種の次世代の遺伝的多様性は、①集団サイズ200個体以上の集団で安定して高く、②200m程度の範囲内で(遺伝的交流の担保のため)近接集団を保持することにより維持される可能性が示唆された。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件)
関東森林研究
巻: 65 ページ: 148-151
森林・林業交流研究発表集録
巻: 平成25年度 ページ: 146-149
American Journal of Botany
巻: 100 ページ: 1896-1904
Forest Ecology and Management
巻: 304 ページ: 407-416
doi: 10.1016/j.foreco.2013.05.026