研究課題/領域番号 |
23780173
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
坪村 美代子 独立行政法人森林総合研究所, 林木育種センター育種部, 研究員 (70415040)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 林木育種学 |
研究概要 |
本研究の目的はスギの花成に関与するジベレリン生合成に関与する遺伝子の同定及び発現解析を行うものである。平成23年度の計画では、平成22年度に準備した材料を用いて実験を行う予定であったが、再度平成23年6月~10月にかけてサンプリングを行った。実験に用いた材料は非常に雄花着花量の多いクローン富士1号(5段階評価で着花指数4.57)である。 6月から着花が確認された8月下旬までの4時期のサンプルをマイクロアレイ解析に供した。着花促進処理であるジベレリン処理区と無処理区では遺伝子発現が増大する時期に差が見られた。無処理区では増大する時期が早く、ジベレリン処理区では増大する時期が遅かった。また、ジベレリン処理区では処理後、シロイヌナズナ等モデル植物で、ジベレリン処理を行った場合に応答する遺伝子と同様の遺伝子群が応答しており、スギにおいても同様の機構で応答していることが示唆された。シロイヌナズナ等でジベレリン生合成経路において活性型ジベレリンの合成に関わっている遺伝子GA3ox、GA20oxについて、ポプラで用いられているディジェネレイトプライマー(Israelsson et al 2004, Eriksson et al 2002)を用いてPCRを行ったところ、増幅が見られなかった。これは、ポプラのプライマーが針葉樹であるスギには適していなかった可能性がある。または、スギにはこれらの遺伝子は存在しないか、全く異なる構造を持っている可能性があるが、今後もプライマーを再設計してPCRを行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度はマイクロアレイ解析を主に行い、雄花が形成される過程で発現する遺伝子のプロファイリングを作成することができ、一定の成果を得た。これまでは雄花で発現している遺伝子によりデザインされたアレイを用いてきたが、今後は別クローンや、シュートで発現している遺伝子によるアレイを用い、情報を充実させていく予定であり、おおむね順調に目的を達成している。ディジェネレイトプライマーによるPCRも予定通り行ったが、増幅しなかったため、手法を改変しているところである。実施予定であったSSHライブラリー作成については、マイクロアレイの結果より、遺伝子発現の劇的な変化を伴う時期の特定が難しく、クローン間、処理間で発現量の大きく異なる遺伝子を単離することは困難であると判断したため、現時点では実施未定である。
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今後の研究の推進方策 |
ディジェネレイトプライマー、または別の手法を用いてジベレリン生合成遺伝子の単離を行い、全長決定、ゲノム構造決定を行う予定である。異なるクローン、異なる設計のマイクロアレイを用いて解析を行うことにより雄花形成時に発現する遺伝子のプロファイリングを進める。また、単離した遺伝子およびマイクロアレイ解析により発現量が変化した遺伝子群の時系列にそった発現解析をリアルタイムPCRにより行う。SSHライブラリー作成については実施未定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は主に今後の研究の推進方策に記した実験を行うための消耗品であるリアルタイムPCR試薬、マイクロアレイ用スライドグラス等、発現解析に必要な各試薬、またシークエンス試薬を購入する予定である。場合によってはマイクロアレイの再設計を行う。
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