当年度は、活性型ジベレリンが多く合成していると考えられる実生個体のRNAを抽出し、ジベレリン生合成遺伝子GA3oxのディジェネレイトプライマーを適用したところ、モデル植物であるシロイヌナズナ、ポプラの遺伝子と相同性が高い配列を得ることができ、3’、5’RACE法により遺伝子の全長を単離することができた。また、林木育種センターにおいて整備を進めているスギ雄花発現ESTデータベース(未公開)より、ジベレリン(GA)生合成経路において最初に働く遺伝子であるent-kaurene synthase(KS)、ent-copalyl diphosphate synthase(CPS)の全長を単離した。 スギさし木苗にGAによる着花促進処理を行い、GA処理後1日目、20日目、雄花が着生し始める35日目、雄花が着生した40日目の4時期のサンプルについてマイクロアレイ解析を行った。GA処理後1日目には、GA処理区では無処理区と比較して49ESTにおいて、2倍以上発現量が増大しており、減少していたのは7ESTのみであった。35日目には65ESTにおいて、40日目では570ESTにおいて、2倍以上発現量が増大していた。一方、モデル植物等で花形成に関与していると考えられる遺伝子と相同性の高いESTはGA処理の有無に関わらず発現量に差はなかった。ジベレリン生合成及び応答に関与する遺伝子と相同性の高いEST群は両処理区で発現に変化が見られなかった。また、単離したKS、CPS、GA3oxについてリアルタイムPCRを行ったところ、全ての遺伝子において、両処理区間で発現量に変化は見られなかった。今後は本研究から得られた結果より、スギにおいてGAに応答する遺伝子の詳細な解析が必要であると考えられる。
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