研究課題/領域番号 |
23780175
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
宮本 和樹 独立行政法人森林総合研究所, 四国支所, 主任研究員 (60353877)
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キーワード | 熱帯林 / ポドゾル / 再吸収効率 / 再吸収プロフィシエンシー / ボルネオ |
研究概要 |
本研究は、マレーシアのボルネオ島において土壌環境の異なる森林タイプの主要構成樹種について、葉の養分利用特性に着目し、養分利用環境の違いによる樹種の適応戦略の違いを明らかにすることを目的としている。マレーシア、サバ州(ボルネオ島北東部)でみられる混交フタバガキ林および貧栄養条件下に成立する熱帯ヒース林の優占樹種について、樹冠部の生葉および落葉直前の葉をサンプリングし、葉が落葉前に回収する窒素およびリンの相対的な量(再吸収効率)を比較してきた。再吸収効率は一般に、生葉中の栄養塩が落葉までに引き戻された割合([生葉の栄養塩濃度-落葉の栄養塩濃度]/生葉の栄養塩濃度)として表されるが、これまでの調査の結果から、単純な比較では森林タイプ間差および種間差が検出されていなかった。今回、新たなサンプルデータを加えると共に、再吸収効率を、樹種別の生葉濃度を横軸、落葉の濃度を縦軸として両対数軸上にプロットした場合の回帰直線の傾きとして評価した。その結果、窒素、リン共に回帰直線の傾きは1よりも有意に大きくなった。これは、樹木の養分利用環境の指標として生葉の濃度を考えた場合、養分利用環境が良好な場所で優占する樹種ほど再吸収効率が低下することを示している(逆に貧栄養環境で優占する樹種では再吸収効率が高い)。以上のことから本調査地の優占樹種では、各森林タイプの養分利用環境の違いに応じて再吸収効率の異なる樹種に置き換わっていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
葉の生葉および落葉のサンプリングや樹木の毎木調査を中心とする野外調査を当初の計画通りに実施できたと判断されたため。本年度の調査により、必要な野外調査を概ね完了することができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、これまでに得られた生葉および落葉サンプルの化学分析を進めるとと共に、データのとりまとめをおこなう。得られた成果は、国際研究集会や日本生態学会での研究発表と学術誌への投稿を予定している。
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