本研究はマレーシア・ボルネオ島の熱帯林を対象に、土壌環境の異なる森林タイプの主要構成樹種について、養分利用環境の違いによる樹種の適応戦略の違いを明らかにすることを目的としている。調査対象は、マレーシア(ボルネオ島)、サバ州のナバワン(標高約500 m)とマリアウ盆地(標高約1000 m)に生育する熱帯ヒース林と混交フタバガキ林である。それぞれの森林タイプにおいて葉と根(表層15 cm)を採取し、葉の窒素再吸収特性および細根のバイオマスに関して分析をおこなった。生葉と落葉の濃度差から得られる落葉前の葉の再吸収効率は、窒素可給性の低い貧栄養の森林タイプ(熱帯ヒース林)に生育する樹種で高くなる傾向がみられ、異なる年に採取した葉でも同様の傾向を示した。また、2 mm以下の細根のバイオマスは窒素可給性の低い森林タイプほど大きくなり、地上部に対する細根バイオマスの比率も大きくなった。以上のことから、熱帯ヒース林では貧栄養環境に適応して限られた養分を効率的に利用する特性をもつ種によって構成されていることが示唆された。これらの成果は国内外の学会やシンポジウムで研究発表したほか、学術誌に論文を投稿し受理された。また、現地の行政・研究機関とも情報を共有している。
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