平成14年に施行された建設リサイクル法により,建築資材である木材の再資源化が義務付けられたことにより,ヒ素などの有害化学物質を含むCCA保存剤処理された木材が大量に廃棄されることが問題となっている。その分別・回収を効率的に行う為に,解体現場におけるCCA処理木材の確実な判別方法の開発が期待されている。本研究では,ペプチド提示ファージシステムを用いて廃材中に存在するCCAに由来する無機化合物粒子を特異的に認識するペプチドを創出し,それを抗原とした抗原抗体反応によるCCA判別技術を開発可能ではないかと考え研究を実施した。 昨年度まで,CCA処理木材中に量的に多く含有することが期待されるという理由から,水酸化クロムを対象として,それに結合するペプチドの探索を行ってきたが,得られたペプチドは水溶性が低く,実際のCCA処理材の判別には使用できないことが明らかとなった。そこで,本年度は,CCA処理材自体をターゲットとして,そこに結合するペプチドの探索を行った。その際,木材細胞壁に非特異的に結合するペプチドが選抜されることを避ける為に,ペプチドライブラリーを一度,無処理材に結合させ,そこで結合しなかったペプチドに対して,CCAをベイトとしたスクリーニングを行った。その結果,CCA処理材に強く結合するペプチドを提示していると予想されるファージを4種得ることに成功した。そこで,それぞれのペプチドを合成したところ,そのうちの2種は十分な水溶解性を有していることが明らかとなった,そこでそれらを用いてCCA処理材に対する吸着試験を行った。コントロールとして無処理材を用いたところ,それらのうちの1種が無処理材と比較して,CCA処理材に極めて強く結合するペプチドであることが明らかとなった。本ペプチドは,実際にCCA処理に用いられてきた注入量1%程度の処理材でも十分に結合することが明らかとなった。
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