本研究は、公共建築物等の木造化が促進される中、中規模木造建築物に用いられるラグスクリューボルトを使用した接合法について、その耐震性能と施工性を改善した『ラグスクリューボルトのクロス挿入接合法』の開発を目的とした。既往の研究より、ラグスクリューボルトを用いたモーメント抵抗接合部は、ラグスクリューボルトに挟まれた柱のパネルゾーンに大きなせん断力が発生し、初期破壊としてせん断破壊することが懸念されている。そこで、本研究では柱のパネルゾーンにラグスクリューボルトを斜め方向に埋め込む新たな接合形式を提案し、その補強効果を期待した。 昨年度までの研究により、柱と梁の接合部の応力状態を再現した簡易的な曲げせん断型の試験方法により、ラグスクリューボルトを斜め埋め込みすることの補強効果を確認した。また、施工性に優れた新たな接合法として、ラグスクリューボルトに併用してロングビスを用いる接合法の開発を行い、その補強効果を実験により明らかにした。 本年度は、中規模木造建築に用いる実大サイズの柱-梁接合部について、実験によりその補強効果の確認を行った。実験条件は、補強しない仕様、ロングビスを4本、8本、そしてラグスクリューボルトを斜め埋め込み補強する仕様の4条件とした。試験結果より、ラグスクリューボルトの斜め埋め込みによる補強により、最大モーメント(耐力)が1.3倍、最大モーメント時の回転角(靱性)は約2.5倍改善することが分かった。また、ロングビス8本による補強では、補強無しに比べて最大モーメントが1.3倍に改善し、回転剛性は同程度の値となった。 本研究のより、従来型のラグスクリューボルト接合に比べ、耐力と靱性を改善した『ラグスクリューボルトのクロス挿入接合法』を開発した。また、施工性を重視したロングビス併用型接合法を開発し、その有用性を実証した。
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