研究課題/領域番号 |
23780191
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研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
中島 啓介 沖縄科学技術大学院大学, その他部局等, 研究員 (10422924)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | セルロース / オタマボヤ / ワカレオタマボヤ / 被嚢動物 / アロモルフ |
研究概要 |
セルロース結合タンパクを用いた免疫染色によってワカレオタマボヤの尾部に見出した新規の鱗様構造について、詳細な記述を行い、学術総合誌Naturwissenschaftenに発表した。同構造は変態前後の尾部の形態変化に伴い、個々の表皮細胞内に層状に蓄積され、さながら外骨格のように尾部全体の形態を支持すると同時に、各種の尾部運動を可能とする弾性を有していた。微量成分分析EDXの結果、硫黄分が検出されたことから、グリコサミノグリカンか難溶性タンパク成分との複合的な構成をしている可能性が示唆されている。このように興味深い素材特性を示す新規構造物の解析をおこなうことによって、新しい機能を実現するための素材に関する基礎的な知見が得られることに意義がある。上記の鱗様構造が、深海性の新種オタマボヤの尾部表皮に存在することを明らかにした。同オタマボヤ種について、ハウスを構成するセルロースの結晶解析を行い、ワカレオタマボヤ同様に純度の高いIβアロモルフ構成をしていることを明らかにした。オタマボヤは分類システムにおいて「綱」として遇される生物群(昆虫と同じレベル)であり、その鱗様構造やハウスのセルロース形態に多様性が認められることが予想される。しかし、現実にはワカレオタマボヤの近縁種以外のデータは報告されていないため、他種の記述を行うことは現象を理解するために重要な知見となる点が意義深い。ワカレオタマボヤ胚にRNAならびにモルフォリノ試薬を顕微注入する試みは、飼育・発生結果が芳しくないことから難航している。すなわち、コントロール群の発生が不良であるため、実験結果の解釈が難しく、更なる工夫が必要な状況にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画において、主たる対象として用いる予定であったワカレオタマボヤの生育・発生状況が芳しくないためである。すなわち、本研究における胚への顕微注入において、表現型への影響の真偽を判定するためには、コントロール群における通常発生が最低限求められるが、それだけの質を備えた検体を必要量安定してそろえることができない状況にあるため。
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今後の研究の推進方策 |
今後も計画通りに飼育ならびに顕微注入に努める。飼育状況は年によって好不調の波が避けがたいため、不調が続く事態に備えて、飼育を介さずに済むアプローチ、すなわち固定試料のセルロース結晶解析や異種発現系によるセルロース合成酵素機能解析の準備を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
上述の通り、顕微注入実験がやや遅れているため、高価なモルフォリノ試薬の使用量が予定より抑えられ、その分の予算が2年目(H24年度)に持ち越しならびに使用予定となった。
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