研究概要 |
平成23年度は、マルチプレックス遺伝子発現定量解析システムを利用し、サイトカイン遺伝子の発現動態を指標とした魚病診断法の確立を試みた。マルチプレックスシステムに組み込んだサイトカイン遺伝子は以下に示す通りである。炎症性サイトカイン、抗炎症性サイトカイン、T細胞の分化/増殖誘導性サイトカイン、B細胞の活性化/分化誘導性サイトカイン、抗ウイルス活性誘導性サイトカイン、単球細胞の分化/増殖誘導性サイトカイン。続いて、構築したマルチプレックスシステムを用いて、病原体構成成分(LPS or polyI:C)で刺激した頭腎細胞におけるサイトカイン遺伝子の発現動態を解析した。その結果、LPSまたはpolyI:C刺激時共に、炎症性サイトカイン遺伝子の有意な発現量の増加が認められ、またpolyI:C刺激時においてのみ、I-IFN-1 and IFN-g遺伝子の発現量の増加が認められた。さらに、病原体Vibrio harveyiを接種したフグにおけるサイトカイン遺伝子の発現動態は、細菌構成成分のLPSで刺激した時の発現パターンに酷似していた。以上の結果より、マルチプレックスシステムによって解析される発現パターンは、病原体感染時のそれと類似することが示唆された。当該システムについては、H23年度9月に国内特許の出願を行った。 続いて、タンパク質レベルおよび細胞レベルでの診断技術の構築を試みた。タンパク質レベルでは、血中の炎症性サイトカイン(TNF-a, IL-6)の測定法をELISA法によって確立した。細胞レベルについては、CD4陽性細胞が産生するサイトカイン(IFN-g, IL-4,IL-17 etc.)についてペプチド抗体を作製し、作製した組み換えタンパク質への反応性の確認を行った。その結果、作製した全ての抗体が良好な反応性を有することが確認された。
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