研究課題/領域番号 |
23780200
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
米山 和良 鹿児島大学, 水産学部, 助教 (30550420)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | クロマグロ養殖 / 遊泳行動 / 浮沈式生簀 / バイオロギング / 養成環境 |
研究概要 |
本研究の目的は、国内のクロマグロ沖合養殖を実現させるために不可欠な情報となる、浮沈式生簀内の養殖クロマグロの遊泳行動を明らかにすることである。 平成23年度では、浮沈式生簀内で遊泳する養殖クロマグロの3次元遊泳経路を可視化するために、動物搭載型小型記録計をクロマグロに装着し、沖合域に設置された直径50mの浮沈式生簀に放流した。回収された行動記録計からデータをダウンロードし遊泳速度, 遊泳方位と遊泳深度の記録を得て実験個体の3次元遊泳経路の推定し、3次元遊泳経路を可視化した。養殖クロマグロが生簀内を周回する行動や, 生簀網に対して鋭角に旋回する行動が確認できた。 本研究では、3次元遊泳経路の推定に大きく影響を及ぼす潮流成分を除去する手法を新たに考案した。これにより先行研究と比較して経路の推定精度が大きく向上し、個体の周回行動や旋回行動などの遊泳行動を確認出来るようになったが、稀に生簀から遊泳経路が突き抜けるなど、誤差成分の除去方法に改善の余地があると考えられる。しかし、この手法を用いた浮沈式生簀内での養殖クロマグロの行動様式の解明は十分可能であると考えられる。 また、実験個体はエネルギーセーブための遊泳法であるグライドを生簀内で頻繁に行っていた。全遊泳時間内でグライドを行っている時間の割合を、養殖個体と天然個体で比較することで、養殖個体が養殖施設内で天然個体と遜色ない行動を行っているのか指標を得ることが今後期待できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に浮沈式生簀内へ放流した養殖クロマグロには行動記録計が装着されており、現在も順調に測定を継続している。これら一部の行動記録計は既に回収されており、平成24年度ではこれの詳細な分析を進めて行く予定であることから、本研究は当初の予定通り順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度では、平成23年度に測定されたクロマグロの遊泳経路から壁面に対する旋回行動を分析し、通常遊泳、グライディングなどの行動カテゴリに分類し、それぞれの行動カテゴリの時間配分を分析する予定である。また、データの頑健性を得るために、平成23年度と同様に行動計測実験を引き続き実施する予定である。 浮沈式生簀の浮沈操作は台風通過時や荒天時に行われ、通常数日にわたって海面下に沈下する。平成23年度の実験方法によるクロマグロの3次元行動計測では2日間の行動モニタリングが限界であり、浮沈式生簀の浮沈操作に対するクロマグロの反応行動のモニタリングには困難であることが予想される。このことから、平成24年度の研究計画として、深度情報のみから実験個体の通常行動・異常行動を検出する方法を模索し、比較的長期間にわたって計測可能な深度情報に焦点をあてた養殖クロマグロの行動実験を実施し、浮沈操作がクロマグロに与える影響を評価する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度では、平成23年度と同様に屋外実験を継続して行う事から、大容量データロガーの購入費用およびこれにともなう調査地への旅費を主として研究費を執行する予定である。また、測定されたクロマグロの遊泳経路から壁面に対する旋回行動や通常遊泳、グライディングなどの行動カテゴリを分離し、時間配分などを分析する予定である。これに加えて、大容量データロガーのデータ分析に備えて、高速に大容量の時系列配列を分析、可視化することが可能なワークステーションが必須であり、これを購入する予定である。また、研究成果報告のための英文校閲料等が計上される。
|