本研究は、国内のクロマグロ沖合い養殖を実現させるために必要不可欠となる、浮沈式生け簀内の養殖クロマグロの遊泳行動を明らかにすることを目的としている。平成25年度では、これまでに実施した浮沈式生け簀内の養魚の3次元遊泳データの詳細な行動解析および学術発表を行った。 記録されたクロマグロ養魚の遊泳速度、深度、方位から3次元遊泳経路を可視化し、遊泳速度と旋回行動を昼夜で比較して、主な斃死原因となる衝突死に繋がる行動を推察した。行動計測の結果から、供試魚は昼夜共におおよそ巡航速度で遊泳していたが、夜間に突進遊泳が頻繁に確認される一方で、夜間では日中よりも緩やかな旋回行動を示した。昼夜の行動の違いは、暗環境下でのクロマグロ養魚の網の視認性に依存するものと考えられた。衝突死を改善する適切な夜間照度環境を作り出すことで衝突による斃死を低減できる可能性を示した。 また、24年度に実施した、高いサンプリング周波数で10ヶ月間の長期データを記録できるアーカイバルタグを使用した行動計測実験では、放流1年後に個体が回収されるも、アーカイバルタグの製造過程の不具合でデータ回収が叶わなかった。しかし、計測期間中に生け簀網に衝突死した養魚をはじめ、1ヶ月程度の短期間で回収されたアーカイバルタグについてはデータ回収が出来たことから、生け簀への衝突死する過程の貴重なデータを回収することに成功した。 以上、得られた成果をまとめて研究成果報告書を提出する予定である。
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