研究課題/領域番号 |
23780202
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
野中 里佐 獨協医科大学, 医学部, 助教 (70363265)
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キーワード | 多剤耐性菌 / 耐性遺伝子 / 伝達性プラスミド / 養殖環境 / pAQU group / pAQU2 / tet(M) / ICE |
研究概要 |
本研究の目的は伝達性プラスミドの簡易スクリーニング法を確立することおよび環境中における多剤耐性プラスミドの形成メカニズムを明らかにすることである。前年度までに、リラクゼースをターゲットとした伝達性因子の検出法を確立し、これを用いたスクリーニングにより伝達性因子を保有する複数の薬剤耐性菌を得た。得られた耐性菌が保有する伝達性プラスミドのうちpAQU2の全塩基配列決定を行い、同一の養殖環境由来で既に論文報告されているpAQU1との比較解析から、両者の間にはプラスミド複製・伝達に必須の遺伝子群を含む保存性の高い領域が存在することを明らかにした。 当該年度はこの保存領域が養殖環境由来の複数の薬剤耐性伝達性プラスミド上に存在することを明らかにした。pAQU1と共通したリラクゼースをもつこれらのプラスミドは新規プラスミドグループ「pAQU group」を構成していると考えられた。また本グループに属するプラスミドはtet(M), tet(B)をはじめとする複数の耐性遺伝子をコードしており、多くの場合、接合体からさらに次のレシピエントへと二次伝達されたことから、養殖環境中における薬剤耐性遺伝子の拡散に重要な役割を果たしていると考えられた。さらに、pAQU groupプラスミド保有菌と同一環境由来の多剤耐性菌の中にはintegrative conjugative element(s)とよばれる既知の機構を保有するものや伝達後にレシピエントゲノム中へインテグレートされるタイプのプラスミドを保有するものが存在した。以上の結果から養殖環境中における多剤耐性菌の広がりには細菌の多様な遺伝子伝達機構が関与していることが示唆された。また海洋細菌が保有する新規遺伝子伝達機構の存在が示唆された。 上記の研究結果は Frontiers in Microbiology誌に投稿し、受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予想していなかった新規の遺伝子伝達機構の存在を示唆する結果を得ることができ、これに関する新たな知見を当該研究期間内に得ることが可能であると考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は本課題で新たに見出された、「レシピエントゲノムへインテグレートされる伝達性プラスミド」についてそのメカニズムの解明を行う。具体的には伝達およびゲノムへのインテグレートのメカニズムを明らかにするために、伝達されているDNAの全塩基配列の決定を行うとともにレシピエントとして用いている大腸菌ゲノム中におけるプラスミドのインテグレート部位を明らかにする。また複数の接合体について解析を行い、伝達されたDNA断片のゲノム中へのインテグレートが特定の配列をターゲットとしているのかあるいはランダムなのかを明らかにする。 本研究結果は平成26年度中に論文投稿することを目標とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
育児休業取得により研究機関を一年間延長したため、次年度使用分として確保した。 消耗品購入費として用いる予定である。
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