研究実績の概要 |
海水や海産魚介類を主な感染源とするPhotobacterium damselae subsp. damselaeは壊死性筋膜炎の起因菌であり、致死的な劇症例が報告されている。本研究は、養殖海域から分離したP. damselae subsp. damselae 04Ya311株の多剤耐性プラスミドpAQU1上に連続してコードされていた新規遺伝子mef(C)およびmph(G)が抗菌薬感受性に与える影響を調べ、これらが新規マクロライド系耐性遺伝子であることを明らかにすることを目的とした。 具体的には04Ya311株の全DNAを鋳型としてPCRを行いmef(C), mph(G)およびmef(C)-mph(G)をプラスミドpQE70にクローニング後、大腸菌JM109へ導入し、微量液体希釈法により感受性試験を行った。その結果、mph(G)を導入した大腸菌では、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシンに対するMIC値の上昇がみられ、mef(C)-mph(G)と連続した形で導入するとさらに上昇することが明らかになった。一方、mef(C)単独の導入では、いずれの抗菌薬にも耐性を示さなかった。既知遺伝子との相同性を鑑みると、mef(C)とmph(G)はそれぞれマクロライド排出ポンプとマクロライドリン酸化酵素をコードしており、これらが共役して薬剤耐性を賦与している可能性が示唆された。また、パルスフィールドゲル電気泳動およびサザンハイブリダイゼーションの結果、養殖場底泥および海水より分離されたV. ponticus、V. alfacsensis, V. ichthoenteriおよびP. damselae subsp. damselaeを含むエリスロマイシン耐性菌22株で、mef(C)-mph(G)が250-350 kbのプラスミド上にコードされていることが明らかになり、これらの遺伝子が養殖環境におけるマクロライド耐性菌出現に関与していることおよびプラスミド伝達により環境中の異なる細菌種に伝播している可能性が示唆された。
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