昨年度、逆相のHPLCを用いて、成熟期にサイナス腺中の貯蔵量が増える分子(成熟促進ホルモン候補分子)を精製した。精製産物を未成熟なクルマエビの卵巣培養系に添加したが、この産物にはビテロジェニン遺伝子の発現を促進する活性(成熟促進活性)は観察されなかった。未成熟な卵巣には成熟促進ホルモンに対する感受性がない可能性が考えられたので、今年度は天然で成熟したクルマエビの卵巣培養系に精製産物を添加してみた。しかし、精製産物には成熟促進活性は観察されなかった。今後、in vivoの注射実験により、精製産物の成熟促進活性を調べてみる予定である。 昨年度、スジエビのサイナス腺から卵黄形成抑制ホルモンを精製した。今年度は精製した卵黄形成抑制ホルモンの生物活性を注射実験により調べたが、ビテロジェニン遺伝子の発現を抑制する活性は観察できなかった。これはスジエビの成熟ステージを揃えることができなかったためと考えられる。今後、RNAiによる卵黄形成抑制ホルモン遺伝子のノックダウンを行うことで、スジエビの成熟を促進できるかどうかを調べる予定である。 クルマエビ科のヨシエビでは脱皮抑制ホルモン様分子に成熟促進活性があることが報告されている。そこで、昨年度はクルマエビの脱皮抑制ホルモンと脱皮抑制ホルモン様分子の組換え体を大腸菌発現系を用いて調製した。今年度はそれらを未成熟なクルマエビの卵巣培養系に添加したが、これらの分子には成熟促進活性は観察されなかった。
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