東京湾産シャコの減少要因解明のため、2004~2013年の野外調査データを解析した。稚シャコの着底盛期以降に1 ml DO/l未満の貧酸素水塊が発生した頻度を調べ、稚シャコ密度との関係を解析した。稚シャコは9月以降に出現し、着底盛期は10月であった。貧酸素水塊は10月以降は湾北部にのみ発生した。一般化線形モデルにより、着底盛期に湾北部に着底した稚シャコの密度は貧酸素水塊発生頻度の増加とともに指数関数的に減少することが認められた。この結果は、貧酸素水塊は稚シャコの生息場所の制限要因であるとともに、年級群強度にも影響する可能性を示唆する。 室内試験と野外ケージ試験により東京湾産マコガレイ稚魚の耳石日輪形成を検証した。室内試験では飽食区および飢餓区を設けた。室内試験と同時期に野島海岸沖に稚魚を収容したケージを投入した。ケージ試験では給餌は行わず、自然環境中の生物を餌とした。両試験ともに1週間経過後に供試個体を回収し、礫石輪紋数を測定した。試験期間中の室内飢餓区の平均輪紋数(5.1)は、室内飽食区(6.8)およびケージ試験区(6.9)より有意に低かった。室内飽食区とケージ試験区の間には有意差は認められなかった。この結果は、稚魚が飢餓状態にない場合には礫石縁辺部に1日1輪の輪紋が形成されることを示唆する。 2005~2009年の東京湾産マコガレイ産卵量および仔稚魚密度の経年変化を調査した。産卵量は2005~2007年にはほぼ横ばいで、2008年以降に減少した。仔魚と稚魚の密度は同様の経年変化を示し、2006年と2008年に相対的に高かった。産卵量と仔稚魚密度の経年変化は異なっていた。仔魚密度が高かった2006年と2008年には冬季の平均水温はその他の年に比べ相対的に低かった。以上の結果は産卵~仔魚期の間の生残率が着底量を規定しており、水温が潜在的な規定要因であることを示唆する。
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