研究課題/領域番号 |
23780207
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研究機関 | 独立行政法人水産総合研究センター |
研究代表者 |
米加田 徹 独立行政法人水産総合研究センター, その他部局等, 研究員 (40597944)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 腫瘍壊死因子 / クルマエビ / プロテオーム解析 / 腫瘍壊死因子受容体 / RNA干渉法 |
研究概要 |
クルマエビTNF(MjTNF)のスプライシングバリアントの発現解析を組織別に行った結果,当初同定したMjTNFとは分子量の異なる3つのスプライシングバリアント(v1,v2およびv3)が存在しており,v1は鰓で、v2は心臓,胃、リンパ様器官、腸および筋肉で、v3は全組織で発現していた。MjTNFの組換えタンパク質(rMjTNF)導入時およびMjTNFノックダウン時の網羅的なタンパク質発現を解析するために、rMjTNFおよびMjTNF二本鎖RNAの作製を行った。rMjTNFは、膜貫通領域を除く、遺伝子断片をpET28発現ベクターに挿入し、大腸菌の形質転換を行った。大腸菌で発現誘導したタンパク質はNiカラムにより精製した。二本鎖RNAの作製は、MjTNFに特異的なT7配列付加プライマーを設計し,RT-PCR法により遺伝子を増幅した。続いて,T7領域を利用した一本鎖RNAの合成およびアニーリングによる二本鎖RNAの作製を行った。二本鎖RNAを5および10 μg/g shrimpで接種し,1から20日間の経時的サンプリングおよび発現解析を行いノックダウン効果の評価を行った。5 μg/g shrimp接種区では、接種後5日目から10日目までにのみ高いノックダウン効果が得られたのに対し、10 μg/g shrimp接種区では、全ての個体で高いノックダウン効果が認められた。MjTNF受容体(MjTNFR)の探索は、ESTデータベースを基にしたRT-PCRにより、MjTNFRが得られたため、Race法により全長塩基配列を決定した。MjTNFRは294アミノ酸残基からなり、N末端およびC末端に膜貫通領域を有し、細胞内領域にはTNFRドメインが認められた。ドメイン構造およびアミノ酸類似性から既知のバナメイエビTNFRとホモログであると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度に計画していた研究内容はすべて達成することができ、加えて平成24年度に計画していたMjTNFノックダウン時の二次元電気泳動によるスポット解析の条件検討を前倒しで遂行することができたため。また、病原微生物の接種を行ったクルマエビの時系列サンプリングおよびサンプル調整も終えている。
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今後の研究の推進方策 |
クルマエビTNFの組換えタンパク質(rMjTNF)を生体へ導入し、経時的なサンプリングを行いタンパク質の精製を行う。MjTNFノックダウンクルマエビの精製タンパク質と併せてプロテオーム解析を行う。それぞれの解析の結果,タンパク質の発現量に変化が認められたスポットの回収および精製を行う。得られた精製タンパク質をアミノ酸シークエンサーによる解析を行い,タンパク質の同定を試みる。同定された因子に対し,データベース検索もしくは縮重プライマー等を用い,遺伝子の分離を試みる。遺伝子が分離されたものに関しては,特異プライマーを設計し,リアルタイムPCRにより発現定量解析を行い,タンパク質発現との互換性について検討する。また,それぞれの因子の発現細胞を解析するためにポリクロ―ナル抗体により免疫組織染色を行う。TNFおよびプロテオーム解析より発現量に変動が認められた因子等の免疫応答に関する知見を得るために,病原性もしくは非病原性ウイルスおよび細菌をクルマエビに接種した後に,それぞれのタンパク質および遺伝子発現解析を行う。また,同様の試験を各組織を用いて行うことで,各臓器に関連したTNFのシグナル制御についても解析する。また、既に構築済みのtwo-hybrid用のMjTNFおよびcDNAライブラリー組換え酵母を用い、MjTNFと相互作用する受容体やその他の因子の単離を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
プロテオーム解析に関係する消耗品費、プロテインシークエンサーの受託解析およびポリクローナル抗体の作製費が主な用途である。また、成果報告として学会発表への参加も予定している。
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