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2011 年度 実施状況報告書

アレロパシーを用いた水産養殖初期餌料生物の増殖と栄養価の改善

研究課題

研究課題/領域番号 23780208
研究機関独立行政法人水産大学校

研究代表者

山崎 康裕  独立行政法人水産大学校, その他部局等, 助教 (40598471)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードアレロパシー / 水産学 / 生物餌料 / 増殖促進効果 / 増殖抑制効果 / 増殖制御
研究概要

水産増養殖は食料問題解決法のひとつとして世界的に注目を浴びている。現在、水産増養殖では初期餌料生物として微細藻類が使用されているものの単独種給餌では魚介類の飼育が不可能であるため、配合飼料や抗生物質などの併用が行われており、飼育水や周辺環境への負荷が問題となっている。よって、安全・安心な食の供給のためには、生産過程における配合飼料や薬剤使用量の軽減が強く求められている。本研究では、高機能生物餌料の安定供給を最終目的として、アレロパシーという本来実環境中で起こっている生物間の相互作用を用いて餌料用微細藻類の増殖を向上させるとともに、タンパク質や脂肪酸含量などの栄養価の変動パターンを明らかにする。当該年度の研究では、水産養殖に用いられる餌料用微細藻類に対するヘテロシグマ(ラフィド藻)やスケレトネマ(珪藻)のアレロパシー効果を調べた。 ヘテロシグマのアレロパシーは、各微細藻類の増殖を促進し、その最大増殖促進効果は、アレロパシー物質を含む培養ろ液の濃度と各微細藻類の初期細胞密度が高い場合に観察された。特に、二枚貝に高い餌料効果を有するパブロバや水産養殖で頻繁に用いられるナンノクロロプシスでは、顕著な増殖速度や最大到達密度の増加が観察された。一方、スケレトネマのアレロパシーは、各微細藻類の増殖を抑制する傾向が観察された。また、両種のアレロパシーは、種特異的に各微細藻類の増殖を促進あるいは抑制するだけでなく、アレロパシー物質を含む培養ろ液の濃度や対象種の初期細胞密度によっても大きく変化した。よって、両種のアレロパシーは、その特異的な増殖促進および抑制効果を通して、水産養殖に用いられる微細藻類の増殖制御に有効である可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当該年度の研究では、試験管培養 (mL) レベルで確認された増殖促進効果をフラスコ培養 (L) レベルにスケールアップした場合においても高い再現性を得ることに成功しており、当初の計画が順調に進展していると判断できる。 特筆すべき成果は、ヘテロシグマのアレロパシー物質添加が、二枚貝に対して高い餌料効果を有するパブロバの増殖速度を促進できる可能性を明らかにしたことである。前述の通り、パブロバは二枚貝に対して高い餌料効果を有する反面、25度以上の水温環境においては著しい培養不良が起こると言われている。当該研究では、アレロパシー物質の添加により、水温25度の条件でパブロバの増殖速度を促進することが明らかになった。以上のことから、当該年度の研究成果は、高い餌料効果を持つ餌料生物の安定かつ大量供給する技術開発に貢献するものであり、研究は当初の計画以上に進展したと判断した。

今後の研究の推進方策

今後は、アレロパシー物質添加の有無による微細藻類の餌料効果を判定するために、餌料用微細藻の糖、タンパク質や脂肪酸などの含有量を測定する。本課題では、アレロパシー物質処理の有無によって 2 L フラスコで培養したパブロバをはじめとする微細藻類の糖、タンパク質および脂肪酸濃度に変動が起こるか否かを明らかにする。微細藻類のタンパク質および脂肪酸含有量は、それぞれプロテインアッセイキットおよび脂肪酸測定キットを用いて測定する。また、微細藻類の糖含有量は、フェノール硫酸法およびカルバゾール硫酸法によって測定を行う。 一方、ヘテロシグマのアレロパシー物質は多糖類含有量が高いため、糖による飼育水中に存在する細菌の増殖に影響を与える可能がある。従って、アレロパシー物質の海洋細菌の増殖に対する影響を明らかにする。本課題では、アレロパシー物質添加の有無により、パブロバをはじめとする微細藻類培養液中の海洋細菌数の経時的変化を混釈培養法によって判定する。

次年度の研究費の使用計画

次年度の研究費は、アレロパシー物質の大量調製等に使用する遠心分離機、タンパク質等の測定キット、英文校閲、および消耗品等の購入のために使用する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2011 その他

すべて 学会発表 (1件) 備考 (2件)

  • [学会発表] 植物プランクトンによるアレロパシーが餌料用微細藻類の増殖に与える影響2011

    • 著者名/発表者名
      山崎康裕・池田至・島崎洋平・大嶋雄治・上野俊士郎・本城凡夫
    • 学会等名
      日本水産学会中国・四国支部大会
    • 発表場所
      下関
    • 年月日
      2011年12月3日
  • [備考]

    • URL

      http://www2.fish-u.ac.jp/jellies/index1.htm

  • [備考] 学会発表(標題:植物プランクトンによるアレロパシーが餌料用微細藻類の増殖に与える影響,学会名:日本水産学会中国・四国支部大会)において、優秀発表賞を受賞した。

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公開日: 2013-07-10  

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